明日にはいない人

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夏が近づいてきた。だんだんと汗ばむ日が増えて会社の冷房も稼働するようになった。

6月の始まり。

じめじめとした雨が降る日も増えた。傘が必須の時期だ。お気に入りの傘と予備の折りたたみの傘、すぐにどこかに忘れてしまうからいつも2本持ち歩いている。

雨の日は濡れないように慎重に身を縮めて、靴も汚れないように水たまりを避けて歩く。

大人になってからなぜこんなにもきれい好きになってしまったのだろうか。子供の頃は雨の中でもはしゃいで水たまりに飛び込んだりしていた。雨が好きだった。

大雨の土砂降りが特に好きで、家の雨戸が閉められて部屋が薄暗くなる。雨の合唱と暗い部屋の非日常感は子供心にワクワクした。

思春期には学校に行きたくなくて、わざと何時間も雨の中で立ち尽くして風邪をひこうとしたりした。雨は当時の私の涙の代わりにザアザアと遠慮なく頬を濡らしてくれた。

雨を避けるようになったのはいつだったろうか。

会社に入り社会人になってから?それよりも前だろうか?

梅雨になり、雨を見るたびに思う。

洋服や仕事や明日のことなんか考えずに雨の中に飛び込んでずぶ濡れになってしまえたらと。

それができなくなることが大人になったということなのだろうか。

明日も雨の予報だ。じっとりと湿った空気にため息をついた。

6/2/2024, 9:39:27 AM