・3『命が燃え尽きるまで』
「その恋は貴方の身を滅ぼすでしょう……」
妻は続けた
「助かりたいですか?」
占い師さん、僕はどうすればいいですか
「妻を大事になさい。アイスを買ったり、エアコンや換気扇の掃除をして、たまにケーキを買うのです……」
わかりました。その通りにします。
私は妻にハーゲンダッツを渡した。
僕はこの人の夫で良かった。ずっと一緒に暮らしていこう。
【終わり】
・1『カレンダー』
カレンダーの裏に妻が落書きをしていた。
いつもいらない紙やコピー紙で落書きをする人だ。
カレンダーの裏には『占いはじめました』の文字と
水晶玉を覗く女の絵が描いてあった
【続く】
・2『本気の恋』
私は占ってください。と妻に言ってみた
妻は卓上時計を水晶玉に見立てて「見えます……」とやってみせた。
「あなたは本気の恋をしていますね」
【続く】
・6『喪失感』
大切なものを作らなければ失った時に悲しまなくて済む。
期待しなければガッカリすることもない。
私はもう学んだ。
神様の子供になりたい。それが叶わないなら
『今の』父親から離れればいいんだ。
私は決心した。
私の染めたハンカチは恥ずかしいと言われ
父親の車のメンテナンスでオイルを吸うのに使われた。
悲しくない。
私は母を探さない。
父を持たない。
大丈夫。生きていける。
私は私を信じる。
【終わり】
・5『世界に一つだけ』
美術の授業で染色をした。
大判のハンカチを
糸で縛ったり、ぐるぐるにしたりして
どうなるかわからないけど
青とピンクに染めた。
世界に1つだけのわたしのハンカチ……にトキメク歳ではなかったけど
思ったより素敵にできたと思う。
【続く】
・4『胸の鼓動』
私の描いた風景画が金賞をとった。
学校の屋上から見える景色を描いたものだった。
郊外だからビルばかりでもなく
山や川があるわけでもなく
中途半端な景色な気がした。
それでも「人々の営みを感じる」
という評価に私は嬉しくなった。
【続く】