・5『私の名前』
午後から出社した。
銀行に行ったり早め処理しなければならない事はそれなりにあって忙しくしていたので朝の事は忘れられた。
嫌な事は忘れるに限る。
会社を出ると私の名前を呼ぶ声がした。
Kだ。私の自転車を返しに来たのかと思ったら自転車は見当たらない。
カフェに行こうと言われた
……禁煙のところなら、と私は答えた
【続く】
・4『視線の先には』
Kの目力に負けて今しがた起きたことを白状した。
Kは
んだそのクソガキありえねー
と言い忌々しい、という表情をした。
じゃあ私は一旦着替えに戻るからと、来た道を歩きだす。
Kも何処へ向かう途中なのかは知らないが隣を歩く。
自転車を押しながら歩くとKにごく自然に交替させられた。
この自転車今日借りていい?とKがおもむろに言う。
私も今日はもう乗るつもりがなかったのでいいよとOKした。
Kは私の顔を見て得意そうな顔をして(なんでだ)
笑った。視線の先には何か企みがある気がしたが
あえて触れないでおいた。
Kはあっという間に何処かへ行ってしまった。
【続く】
・3『私だけ』
地元に残った者同士、ちょくちょく顔を合わせることはあった。
仲がいいという訳ではない。
Kは歩きタバコをしながら私に気付き
手を振る。
正直苦手だ。
どーしたのー?って聞いてくる(声がデカい)
タバコをポイ捨て(やめろ)
大丈夫?と言われた
うん、何でもないー
ちょっとバランス崩しただけ。
って答えたら
で???
ホントは何があった??
とKは言う
こーゆー場面で男に頼んないのは君だけ
と続けるK。
めんど
【続く】
・2『遠い日の記憶』
交番に寄ろうと思ったけど、もうなんだかどうでもよくなってきた。周りに誰もいない、防犯カメラもない、どうせ言ったところで捕まらないだろうし。
会社に連絡して午前休をもらった。
休むほどではないし。
嫌な事があれば
芋づる式に
嫌な事は思い出された。
怒りが記憶を蘇らせる。
もう誰でもいいから私に心から謝罪してほしい。
そう思っていたら向こうから同級生が歩いてきたのだ。
【続く】
・1『空を見上げて心に浮かんだこと』
朝の通勤で自転車を漕いでいたら
後ろから来た自転車に追い抜きざまに後輪あたりを蹴られた。
ギョッとして見るとまだ小学生くらいの男の子だった。
声も出せずバランスを崩して自転車ごと倒れてしまった。
少年はどんどん遠ざかっていくし
自転車の下敷きになった足は痛いし
今日はもう仕事行くのやめよう、となった。
なんでこんな目に?
空を見上げながら少年に天罰が下ることを願った。
会社に電話するのも億劫だなと思いながら。
【続く】