・1『夏』
私が。
私が、
天気を操っております。
雷を起こし、豪雨を招きます。
暑くて、ひどく暑くて、
入道雲なんて、見ないでしょう。
私が消したんです。
恨みがあって
そうしました。
あの人の好きな夏が
もうやってこないように。
花火大会は全部潰します。
【続く】
・5『ここではないどこか』
もし次の生があるなら地球はやめておこうかな、そろそろ資源も限界が見えてきたし。
私は多分この星に一番モテたな。他の人達はほとんどいなくなってしまった。
いつまでも美しいまま、少しずつすり減ってゆく。
私もこの星も。
共にどこか足並みを揃えて年を経るところに行きたいものだね。
【おわり】
・4『君と最後に会った日』
もうヨボヨボのおじいちゃんおばあちゃんになったあなた達と会ったのはいつでしたっけね。
私の遺伝子のデザイナー兼、生物学的ご両親どの。
私の寿命では天国で再びお会いできるのはまだ先かもしれませんね。
このままこの星が滅びゆくのを見届ける運命かもしれませんね。初代デザインベビー達もどんどん脱落してしまって……白人ぽさに拘ったのが良くなかったんですかね?
なんで私はこうも美しく強いままなんでしょうね。
もちろん今でもモテていますよ。
だから早く会いにきてください。
私の最後を見届けてくれるどこかの、誰か。
【続く】
・3『繊細な花』
今や禁止されたデザインベビー達がすっかり大人になった頃我々は『繊細な花世代』と呼ばれた。
あとは枯れゆくのみ。そのうち遺伝子操作された美しい者たちはいなくなってゆく。
実際には『自然に』産まれ落ちた後世の方が我々には繊細に見えたのだが。
たったの70年ほどしか生きられないなんて。
80を過ぎても青年の見た目の私は今もたいそうモテている。
【続く】
・2『1年後』
デザインベビーを作ることを禁止されてから1年後
再び人間は様々な姿を見せることに……とはもちろん急にはならず
社会は圧倒的に『白人ぽい』見た目の人間ばかりだった。
変化が見て取れるようになるにはあと三十年ばかりの時間が必要だろう。
青年の見た目の私は相変わらずモテている。
【続く】