INARI

Open App
5/20/2025, 12:48:56 PM

絵画のちょっとしたコンクールで優勝した。
コンクール前は夏休みだったので、おばあちゃん家に行って描いた。毎日、毎日、毎日。
お父さんは今日も帰らない。
おじいちゃんは絵の具を買ってくれた。
おばあちゃんはいつも夜ご飯を作ってくれる。
お母さんのご飯は最後にいつ食べたか分からない。
僕はまだ子どもなので、この気持ちをなんて言えばいいか分からない。
ただただひたすら今度こそ喜んでもらいたくて、スケッチと向き合う。
「優勝」と言われた絵の、空の青いところにぽたりと涙が落ちた。
涙が空に溶ける。

―空に溶ける―

5/19/2025, 2:11:29 PM

僕は
どうしても君と恋がしたくって
今日も消しゴムを忘れたふりしたし
(あんまり忘れて嫌われないようにしないと)
君の好きなアイドルも覚えたし
(好きな曲も語れるように勉強したし)
君の嫌いな科目でこの間良い点数とったし
(徹夜したけど)
そろそろ
もう少し隣を意識してみませんか?

5/15/2025, 12:34:08 PM

10円はげができた。原因は仕事のストレスだ。
毎日欠かさずやっていた髪のお手入れも、その道具も気持ちも棚の奥底にしまってからもうどれくらいだろう。よく褒められてて自慢だった髪が、枝毛に隠れてなりを潜めてしまってる。服も、何パターンかを着回してるだけ、メイクも最低限。今日も満員電車に押しつぶされて、社畜とやらの出来上がりだ。
ふと開いたSNSで、昔好きだったアイドルが活動を終えるのを知った。押し寄せられるコメントを見ているうちに、学生時代が甦ってきた。好きなものは好き、嫌いなものは嫌い、と純粋にそれ以外を疑わなかったあの頃。今思うと穴に隠れたいくらい恥ずかしいこともあったし、たくさん間違いもしてきたけど、私はあの時確かに、自分自身を生きていた。
「辞めます。」と上司に連絡した。それは、週末の疲れと、満員電車への怒りと、SNSに投下され続けてるファンの熱量のあるコメントのそのテンションに感化されたもので、衝動的な行動だったかもしれない。
それでもいっか。
自慢だった髪と、アイドルを追いかけてた青春を取り戻しに行こう。
10円はげが、今は私にとって勇気の光だ。

光輝け、私の10円はげ。暗闇の中で。



「光輝け、暗闇で」

5/15/2025, 8:56:28 AM

親友が突然音信不通になった。

あの日から5年、私はいまだに上手に呼吸できない。

私にとって、君は ”  ” だったんだね、とか、

今さら例えるなんてちょっと痛いか。


「酸素」

5/13/2025, 1:13:54 PM

しにぎわの、
ぼうだいに流れこむきおくの中で、
あの時振ってやったあの子の、
電車に乗り込む時の、
スカートの色が見えた。

Next