あさとこ

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10/25/2022, 3:51:56 PM

【友達】

マカロニをお湯で戻して、ケチャップをかけると、味がナポリタンに近くなる。
家の冷蔵庫にはほとんど食材が入っていないから、空腹を満たすだけの間に合わせの料理しかできない。
栄養バランスも味も良いとは言えないが、お腹が膨れると、なんだか幸せな気分になる。
私には母はおらず、父はすき家の深夜バイトをしているので、家ではいつも一人だ。
ずっと一人だと、色々と、嫌なことを考えてしまう。
親の離婚、親戚との不仲、成績や将来のこと…
嫌なことばかり考えていると、自分は一生幸せにはなれないのではないか、どうせろくな仕事にも就けない、結婚もきっとできない、できたとしても、私はきっと真っ当な妻にも母にもなれないだろう…と、強烈な不安を感じてしまう。
一人でベットに横たわりながら、思考を巡らせていると、ラインッ、シュポッっとスマホから通知がなった。
友達からだった。
〈一緒に勉強しよ〜😀〉
〈今通話できる?〉
《うん、できるよ!》
返信すると、直ぐに電話が掛かってきた。
『あ、もしもし〜?聞こえてる?』
「もしもし。うん、聞こえてるよ」
『明日数学のワークの提出日だよ』
「え、うそ、私全然やってない」
『あは、やばー笑』
「何ページまでだっけ」
『えーっとね…』






『んーそろそろ眠くなってきた』
「あ、そう?…じゃ、そろそろ終わりにする?」
『うん、おやすみ〜また明日、学校でね!』
「はーい!おやすみなさい〜…」
ピロン
【通話が終了しました】

楽しかった!
勉強も進んだし、嫌な事考えてたのが全部吹き飛んだ。やっぱり、人と関わるのは大事なんだろうな。

そろそろ私も寝よう。明日、またあの子に会えるから。
劣等感を感じても、あの子の恵まれた環境に嫉妬しても、私はずっとあの子と友達でいたい。そう思った。

10/24/2022, 1:11:57 PM

【行かないで】

私を好いてくださるのなら、私を寂しくさせないでください。
私は、あなたのことを否定したりは致しません。
あなたが過去のひとにひどいことをされていたのは存じております。
私は、何処か不安定で、優しい貴方の事が好きなのです。
あなたになら、私、何されても許すことができると思います。
あなたなら、何をしたって、どんな罪を犯したって、間違いをしたって、愛せます。
いつだって、抱きしめて差し上げます。

だから、遺書を書く手を止めてください。
大量に飲んだ薬を、吐き出してください。
こんなときだけ、愛してる、なんて、言わないでください。
私は、貴方の哲学を愛しています。
また、貴方の話を聞かせてください。

顔色が、悪くなってきました。あなたの顔は、血色を失って、涙と鼻水でぐちゃぐちゃに汚れて、そのままだと、きっと不快でしょう。
私の服で、顔を拭います。服が汚れることなんて、一切気にしません。 
そして、あなたの口に指を差し込み、無理矢理に吐かせます。
出てきたのは、薄い胃液と、あなたがいつも飲んでいる睡眠薬。
一瓶も飲んだら、死んでしまうでしょう。
ほとんど、消化してしまってるじゃないですか。
あなたのことだから、私を生かして、一人だけこっそり死のうと考えたのでしょう。
ずっと、私と一緒にいると約束したのに。

…意識を、失ってしまわれました。
119番、かけないと行けませんね。
スマホ手に取り、1、1、9、と 番号を押します。
そして、ふと気づいてしまいました。これは、あなたが本当に望むことなのか、と。 


台所から出刃包丁を持ち出し、あなたの首に突き立てます。
包丁はかんたんに首に突き刺さり、頸椎にあたって止まりました。
あなたの首からは、夥しいほどの血が飛び出しています。
あなたを殺してしまいました。
涙が止まりません。
自分で殺しといて、あなたとの楽しかった思い出ばかり考えてしまいます。
そして、私の口からは、
「行かないで…」
と。最低です。



喉の奥に苦しさを感じながら、あなたを刺した包丁を、首元に当てる。
直ぐには死ねないかもしれません。
それでも包丁を強く押し当てていき、鋭い痛みと、たらたらと血が流れるのを知覚します。

先に行かれてしまったのは残念ですが、私も、直ぐについていきますから、だから…。
私を置いて行かないで。







終わり。

最初は友達と山登りに来ていた女の子が友達に置いてけぼりにされて「行かないでーーー!!!」って言うお話を書こうと思ってたんですけど、思っていたよりも暗くなってしまいました。