桜の絨毯ができるほど
散ってはいない桜が
4月並みの外に佇む。
入学式、卒業式、
進級の季節。
毎年桜は風に吹かれるがまま
サアサアと淡い桃色を光らせる。
学校という存在は
近くて遠い。
必死で築き上げた人間関係も
崩れるのは一瞬で
もう二度と会えないかもしれない。
そういえば随分前に
気の強い子がいた。
芯を持っていて、
人が群がっていても
ズンズンと進んでいく君。
どんな会話でも
ふとした時にバッサリと切って
切り替えていく。
休み時間は
よく私に話しかけてくれたけど、
長々とは話さずに手短な世間話。
自分をしっかり持っていて憧れていた。
人は気付かぬうちに
周りに合わせる生き物だから。
"Good Midnight!"
桜の花の雨の中
君は今
どうしてるのかなって。
どこか物憂げな空は
太陽を遮り
やがて雨を降らせた。
数ヶ月ぶりの雨。
サーッと降る時もあれば
ザーッという音が聞こえることも。
傘をさしてしまえば
全部パラパラという音に変わるけど。
だいぶ前に読んだ本に
傘が人と人を繋ぐ、
そんな不思議な傘屋の話が出てきた。
私の傘はそんな大層なものでは
無いのだけど、
何か1つから
物語が始まるのっていいなって。
考え事をしていたら
いつの間にか服はびしょ濡れ。
物憂げな空のせいで
薄い月は見えないまま。
"Good Midnight!"
春を感じる暖かな気温は
どこかへ飛んでいき、
また少し冷たい風が
雨と共にやってきた。
世界は小さな命で溢れている。
でも人は命が見えないから
大人とか子どもとか
名前をつけているけれど。
人の数だけ天使がいて
生涯そばにいる。
だから人は
孤独を感じることは無いはずなのに
天使が見えないから、
天使がいる所に
ぽっかりと穴ができてしまう。
それを埋めるのが
他の人との交流、趣味など。
不思議なことに
天使のせいで
穴ができるからこそ
その人の人格や性格ができる。
個性というものができる。
神様にとっても
それが不思議で不思議で
たまらなくて、
海を割って見せたことがあったのだとか。
そして
天使もまた、
人に影響を受け
個性ができる。
旅をする命のお供をする天使は
風に吹かれるのが気持ちよくて
よく羽を広げている。
海の研究をする命のお供をする天使は
潜水艦から見た深海の色に心惹かれ
よく海を泳いでいる。
特に夢中になれることがない命の
お供をする天使は
のんびりと家で過ごす楽しさを知り
よく命と共に昼寝をしている。
"Good Midnight!"
世界は小さくて
神様に包み込まれている。
命も小さくて
天使に包み込まれている。
暖かくて
ぎゅっと抱きしめてくれる。
小さな命が
消えてしまうその時まで。
Love you。
吐き気。
ロマンティックな展開、
綺麗な景色、
グラスに入った赤ワイン。
返事は特にしなかった。
その代わりに
グラスを倒して
赤ワインを血のように流した。
それを見て
私が席を立っても
何も言ってこなかった。
昔から私は
寂しがるくせに
好意には吐き気を催す。
それが向けられたものであっても、
誰かに向けたものであっても。
"Good Midnight!"
私は少子高齢化の
今の日本のお荷物なのだろうか。
好きだと思う、思われることに
違和感を感じてしまう
こんな私は。
そよ風は
春の暖かさを届けてくれるけど
桜はしっかりと
時期を理解していて、
まだ咲きそうにはなかった。
梅はもう咲いているけれど。
満開の梅の木の下で
見かける度に読んでいる本が
変わっている人がいた。
その人はいつも梅の木の下にいて、
本を読んでいた。
SFが多いけど、
たまに普通の小説もあって
遠くから見ていて飽きなかった。
少し前の雨の日、
さすがにこの雨の中で
本は読まないだろうと思っていた。
けど梅の木の下には
変わらず本をペラペラとめくり、
傘をさしていたその人がいた。
あの時は驚いた。
家やカフェで読んだ方がいいだろうに。
ふふっ、と
部外者で通りすがりでしかない私は
遠くで笑っていた。
こういう変わらないものの下で
変わらずにいるってのが
素敵だと思った。
"Good Midnight!"
梅の木の下で本を読むあの人は
まるで春の太陽のような
眩しくてあったかくて
近づけない人。
近づいてしまったら
あの人の変わらない日々に
私が入り込んでしまって、
消えてしまいそうだから。