るに

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12/25/2025, 3:48:27 PM

真っ暗な部屋。
クリスマスだというのに
ツリーすらない
しーんとした静かな部屋。
プレゼントなんかもちろん無くて
いい子って褒められたのも
随分昔のことで。
服なんか、髪なんかお構い無しに
床に寝っ転がる。
冷たくて硬い。
でも私には暖かく思えた。
外は寒い。
私も冷たくて寒い。
人肌が恋しくなってしまうのも
仕方がない事。
コイビトなんか
私に出来るはずもなく
クリスマスが終わっていく。
駅では別れを惜しむカップル。
バス停では抱き合い、
じゃあねと手を振るカップル。
こんなクソ寒いってのに
私以外はみんな暖かそうで
ずるいなあって。
重い体をあげて
冷蔵庫から缶ビールを取り出す。
ぷしゅっ。
缶を開ける音は
いつ聞いてもいい音。
しゅわしゅわと炭酸の音が
口いっぱいに広がる。
やっぱぼっちはビールでしょ。
空気に乾杯して
私は幸せでいっぱいになる。
胃にビールが注がれて
満たされていく。
何もかも楽しく思えるくらい、
嫌なこと全部忘れてしまうくらい。
"Good Midnight!"
いつの間にか外も真っ暗。
酔いが覚めて
また苦しい独りになった。
遠い目で
外の暗い青色の空を眺める。
来年の今日こそは
幸せになれますようにと
祈りを捧げて。

12/24/2025, 3:33:40 PM

ねこ。
真っ黒で優雅なのに、
いつも甘えん坊な
野良猫。
私が窓を開けて換気をしていたら、
たまにふらっと現れて
私に挨拶するだけだったり、
窓のところで寝転んだりして、
帰っていく。
撫でたことがあるのは
ほんの数回だけ。
でも付かず離れずの関係は
人間関係等で疲れきっている
私にとっても、
ツンデレっぽいところがある
黒猫の君にとっても、
居心地のいい関係だと思う。
今日はクリスマスイブ。
明日はクリスマスだけど、
特にすることもなく
一人きりで過ごすんだろう。
そう思っていたら
君がひょこっと顔を出して、
家に入ってきた。
いつもクリスマスは一人だったから、
私は君が来てくれて
すごく嬉しかった。
いつもと変わらない顔で
私が温めて出したミルクを飲んでいる。
きっといつか
君は私を抱きしめてくれる。
"Good Midnight!"
それは遠い日のぬくもり。
でもどんなものよりも暖かい、
生き物のぬくもりだろう。

12/23/2025, 2:45:43 PM

ぼっ。
キャンドルに火をつける。
薄暗く照らされる部屋の中、
ふわりと広がる
無地のワンピースを着た少女が1人。
ゆっくりと、透き通る声で
何かを話し始める。
むかしむかし、
ある所に、
何かをとにかく集めることが大好きな
収集家がいました。
普段使い出来るものから
ただ見るだけのもの、
見ないのに集めて
倉庫に保管するものまでありました。
収集家は好きなものを
好きなだけ集めて
眺める時間が大好きでした。
ある日、
収集家は収集することに対して
意味が欲しくなりました。
意味のない収集こそ
楽しく満たされる瞬間だったのに、
いつの間にか意味というものを
持ちたくなったのです。
人は年月が経つと
ガラッと変わってしまうものですね。
それから収集家は
何でもかんでも集めるのを辞めました。
もう収集家では
無くなってしまったのです。
趣味は無くなり、
その人はその人では無くなっていきました。
意味を求める中で
自分という
無くし物をしてしまったのです。
これは何のためにある?
どんなことに必要?
最低限欠かせないのは?
いや、本当に意味が欲しかったのは?
私、なんで生きてる?
風で揺れるキャンドルの灯り。
少女が窓を閉めることなく、
そのまま風で
キャンドルの火は消えてしまった。
いや、
風で消えたかのように思えた。
"Good Midnight!"
生きている事に意味なんか無くても、
自分さえ無くさずにいれば、
幾らでも意味を作り出せたのに。
そう微笑みながら話し終え、
風が届く前に
ふーっと息を吹きかけた。

12/22/2025, 3:24:00 PM

私はずっと
長い道が嫌だった。
何の変哲もない、
変わらない道。
いつも同じルートで
いつも同じ景色で
特別楽しめる四季も無くて。
この道を通ると、
あぁ、帰ってきちゃったなぁって
今の今まで味わっていた
外の雰囲気が全部消えて、
実家のような既視感だけが残る。
毎日違うことがあったのに
ここまで来れば
いつも同じ日。
でも今日は違った。
和傘がいくつも並んでいて、
ぼんやりとした灯りが道を照らしていた。
私は心が踊った。
薄暗い道は
私をどこかへ導いてくれるかのようだった。
楽しい。
私は思わずスキップをする。
家に帰るのが
今日は楽しかった。
光の回廊は
いつもの道を
ここじゃないどこかに
変えてくれたのだ。
"Good Midnight!"
ゆずを湯船に浮かべる。
シャワーで流しても
ほんのり香るゆずの匂いは
私を包んでくれる。
1番夜明けが遅くて、
1番夜更けが早い、
今日は冬至。

12/21/2025, 2:44:40 PM

人といる時
私の中で降り積もる想いは
苦くて汚くていらないもの。
雪と一緒に溶かして
水に流してしまいたいくらい。
子どもの頃、
不意に気づいてしまったこの想い。
人、人、人。
うっ。
吐き気、頭痛、めまい。
自己嫌悪に陥って
どうも上に上がれそうにない。
私は人を傷つけてしまう。
自分で自分の日常を
壊してしまう。
会話が好きで、会話が楽しい。
でも会話しすぎると
頭がだんだん働かなくなってきて、
嘘や思ってもないこと、
相手を傷つけることを言ってしまう。
良くは無いが、
それだけならまだ良かった。
私は行動にも出てしまう。
軽く叩く、蹴る。
後悔してもし切れない。
だってもう謝る相手は
友達ではなくなっているのだから。
嫌われて、嫌われて、
謝る機会も与えて貰えなくて
1人になっていく。
それでも積もるものは積もっていく。
黒いものがどんどんと、
私の型に流し込まれて
私じゃない私が出来上がっていく。
私じゃないのに…。
私じゃ…。
"Good Midnight!"
よく言うわ。
どこかで人を見下して
自分を高く評価してたくせに。

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