五感が全部無い
人間モドキを
人はロボットと呼ぶのでしょう。
真っ暗で何も聞こえなくて
食べるものに
味が無いのは当たり前で
今どこで何を触ってるかすら
わからない。
甘い香りなのか、
臭い匂いなのか、
そもそも匂いってなんだろう。
わからないことだらけで
文字は読めないし、
点字も触れない。
手話すら出来ない。
一昔前の
出来損ないのロボットみたい。
唯一できた事は
考えること。
全ての情報が
世界と閉ざされている中、
私自身の何かを使って
何かを考える。
父親の顔も
母親の顔も見たことがなく
兄弟がいるのかすら知らない。
何を食べて生きているのかわからない。
なんだか眠いな、なんだかお腹が空いたな、
そう思ったら何故か
すぐに欲求が満たされる。
何かが私のお世話をするように
私が何かに生かされている。
私は記憶力がものすごく良くなった。
でも記憶するのは
私がわかってる私のことだけ。
何が何かわからないから
ずっと寝て起きてを繰り返してる。
"Good Midnight!"
一通の手紙を書いた。
もちろん私宛で
私の心から私の心へ贈った手紙。
私の全てを注ぎ込んだ
秘密の手紙。
来世はロボットとして
お荷物としてではなく
人として生きてみようと。
冬は寒い。
吸う空気が冷たくて
鼻も喉もキーンと痛い。
でも冬は独特の乾燥した匂いが漂っていて
私はその匂いが好きだ。
いつもと変わらない12月のある日、
冬の足音はすぐそこまで
じゃあ、出迎えてもらおうと
私は毛布にくるまる。
こんな寒い日は誰も外に出ない。
冬の空を全部全部一人占めにするんだ。
無理に笑ってみせた。
遠すぎる冬の記憶。
一生一人でも
二度とここへは帰れなくても
待っている景色はきっと綺麗。
それは私だけの冬だった。
さよならって言ったって
簡単に冬は去ってはくれないし、
それで全て終わってしまうような
季節じゃない。
変わらない日々が
嫌と言いつつも何となく好きで
空も星も
私のことも
いつか好きになれますようにって
流れ星に願ってみたり。
"Good Midnight!"
冬の冷たく強い風で
季節外れの風鈴が鳴り響く。
贈り物が届いていた。
ダンボールに
とてもカラフルな絵が描いてある
メモが貼ってあって
なんの意味かわからなかった。
ダンボールを開けても
中身は無くて
ただの空っぽの箱。
馬鹿らしくなって
ゴミ箱に捨ててしまった。
けどメモは綺麗な絵に見えたから
冷蔵庫にでも貼っておくことに。
それから何日も何日も過ぎていって、
贈り物のことなんか忘れかけてた頃。
一通の手紙が届いた。
そこには
前に届いた荷物に貼ってあった
メモ用紙の絵に
見覚えがないのなら記憶に障害があるかも。
そんな内容の手紙だった。
差出人はもちろん私。
物忘れが少し酷いなと思っていたけど
ここまでとは。
"Good Midnight!"
なんで絵なんだろうと
ふと思った。
記憶のことを伝えたいなら
手紙みたいに文字でいいはず。
色々探っていると、
手紙の裏には
誕生日おめでとう、と書かれていた。
なるほど、忘れる前のプレゼントのつもりか。
絵をもう一度よく見てみると
なんだか懐かしい風景が思い浮かぶ。
忘れたくなかった
大好きな人たちが住む
大好きな峠。
贈り物の中身は
このたくさんの感情だって
この色が教えてくれて。
凍りてつく星空を
暖かく白い息を出しながら
何となく眺めていると
星空に何故か触れれて、
ひんやりとした感覚を味わった。
そのうち
ポロッと星が落ちてしまったけれど、
流れるように落ちたので
流れ星。
そう綺麗に呼ばれて
本当によかった。
自分の手がわからないほど
空は暗いのに
冷たい夜空に手が届いていて
サラッとしていて
星がある所はザラっとしていて。
まるでここは夢のよう。
雲もふわふわとこちらまで来る。
もちーっと伸びて
さっと離れていく。
"Good Midnight!"
何もかもクソみたいだ!って
どうでもよくなって
上なんか見てなかった。
真夜中には
こんなに面白い星空があったんだ。
君と紡ぐ物語は
何度も途切れて
白紙のページも
いくつかあって。
でも何故か心惹かれるストーリーで、
1歩挑戦することが
自分の成長になったり、
時には修羅場となったりと
運で化けるってのが
全部詰まってた。
緊張して手も声も震えた。
立ち向かう勇気が
どこにもなかった。
そんな時友に助けられ、
選択肢がこれ以外ないって
思い込んでる友を助け、
誰かが誰かの未来を作り
また誰かも誰かの未来を作る。
肌触りのいい物語。
何をするにも
腹は減ってしまう
当たり前の日常。
それすらも紡がれていく。
ずっと忘れないように
記されていく。
たまに過去が恋しくなって
振り返って、後悔して、
あの時こうしていればなんて
考えてしまって。
涙が零れて滲んでも
過去は滲んでくれなくて
また悔しくて。
"Good Midnight!"
これは私のことを書いた
私の日記と私の物語。
私の全てが君で、
君の全てが私。