私的には
もう幕は降りてるはずなのに
まだ続く物語。
退場させて欲しいのに
周りは無理やり続けようとする。
傀儡人形みたいに
糸が張られて動かされる。
口を動かされて、
思ってもない言葉が出てくる。
手が動かされて、
何故か机に向かって書いている。
足が動かされて、
行きたくもない場所へ行く。
あれ、私何してたんだっけって何回も思う。
同じような傀儡人形が
何人もよく見える。
糸を切って逃げ出す人もいたけど
その先は真っ暗。
本当に家に帰れたんだろうか。
操りきれないくらい
下に体重をかけて
ぺたんっと座ってる人もいた。
けど座ると
次立つのがキツくて
私が見たのは2人、
床を突きぬけて下に落ちていった。
糸はもちろん体重を支えきれずに切れた。
私もどちらもやろうとしていた。
だからこそ
先にやってくれる人がいて
どうなるのかがわかってよかった。
要するに逃げられないってコト。
娯楽があるっていっても
満たされたり
幸せな気分になるのは一瞬だけ。
すぐ飽きる。
バリエーションが少ないのだ。
泣く暇もなく
次の日がやってくる。
"Good Midnight!"
今日も朝か昼かわからない1日を
傀儡人形みたいに
傀儡人形みたいな人と
社会を生きていく。
夏にここへ渡ってくる鳥。
渡り鳥は夏を連れて来る。
それからずーっといって
ここに夏を満遍なく降り注がせる。
秋頃になると
また夏を連れて去っていく。
私は夏も渡り鳥も大嫌いだ。
変な声で鳴くし、
夏は暑いし。
それでも毎年やってくる。
私のように嫌いな人もいれば
夏に見れる景色が好きだとか
暑いのが好きだとかいう
物好きな人もいる。
よくわからないけどね。
実際のところ、
物好きな人には会ったことがない。
ここには夏が嫌いな人しかないない。
だから渡り鳥の鳴き声を聞くと
みんな家に閉じこもって
エアコンをつけたり
扇風機をつけたりする。
日陰ロードといって
ミストと屋根がついた道が
街中に行き渡り、
日を浴びたら死ぬゾンビのように歩いた。
夏はぐーたらする季節なんて
定着してきちゃった頃、
ぱったりと渡り鳥が来なかった年があった。
みんな焦った。
いつ夏が来るのかわからなくて
1日中エアコンをつけた。
1日中扇風機をつけた。
1日中ミストをつけた。
そして電力不足になってきた時、
ようやく渡り鳥が来た。
10月のことだった。
"Good Midnight!"
秋だというのに
寝苦しい夜が続き
私はこうして
夜更かしが日課になった。
さらさらと落ちる星の砂。
この星月夜の砂漠の砂は
流れ星からできている。
いわゆる星のカケラ。
たまーに街中にも落ちてるらしいけど
大体はここに集まる。
私はこの砂漠の管理と
数ヶ月前に観測された
三日月クジラの確認をしている。
星月夜の砂漠では
いつも三日月が空に昇っているけれど
ある1週間だけは
三日月が特別輝いて見える。
その1週間だけ
三日月クジラは海面から顔を出す。
毎日ここに来るのは大変だけど
それなりにやりがいもあって
まあ楽しんでる。
クジラ以外には
動物は観測されていない。
だから私はそれも見なければいけない。
砂漠を隅から隅まで知るには
まだまだ時間がかかる。
機械は空気を汚す。
なので人の手や目で
しっかり見てやるしかないんだ。
"Good Midnight!"
朝日が昇らず
三日月の綺麗な砂漠。
私はいつまで
知らないことを知ればいいんだろう。
昔から飽き性だった。
どんな事にも興味が湧いて
やり始めるのはいいけど
続かない。
思っていたのと違ったり
ちょっとでも
上手くいかなかったりしたら
すぐ飽きてやる気も失せてしまう。
私は何かをしていたかった。
何かを続けていたかった。
けど興味が1度無くなると
どうも身体が動かない。
思考も他の考えが浮かんで
まとまらなくなる。
もう二度と興味を持たなくなる。
正直私は私に何かすることを
おすすめしたくない。
それでもやりたい、気になる。
好奇心が旺盛だったんだな。
映画にもテレビにも
本にもアニメにも影響された。
宇宙飛行士になりたい、
落語家になりたい、
パルクールをしてみたい、
弓道部に入ってみたい。
ああ、嫌だ。
好きなものが好きじゃなくなる。
飽きてくる。
どうでもよくなってくる。
私はこの世に飽きないものは無いと思った。
だから求めるのをやめて
今ある好きなものを
飽きない努力をした。
ずっと見ていたい推しも
2週間に1回だけ引き出しから出して
飾って眺めた。
アニメも見る回数を減らした。
映画は上映中の3文字を見ないようにした。
テレビは天気などの
最低限の情報だけを見るようにした。
スマホも使用頻度を少なく…。
結局飽きるどころか
楽しみがなくなって
なんでここにいるのか分からなくなった。
久しぶりにテレビを
コマーシャルまで見ていた時
あ、今私人生に飽きてる。と、
ふと思った。
"Good Midnight!"
それでも信じたいものも
好きなものも
そのままでいたい。
こんなわがままも多分
これで最後。
君と出会った日。
それは君の名前を呼んだ日。
全身真っ黒で
野良にしては綺麗な毛並みな
黒猫の君。
君は名前をいくつも持っていたよね。
クロ、キチ、マメ、ヨウカン。
他にも沢山。
私はネオって呼んでたけど
君はどの名前が
1番馴染みがあったのかな。
聞くのを忘れちゃったなぁ。
お気に入りの店で
焼き鳥を注文し終わった時、
いつも小さな窓から君の姿が見えた。
君が見えなきゃ
1日が終わった気がしなかった。
雨の日は私を店の中で出迎えてくれて
店が休業になった時は
近くの公園の隅で
じっと待っててくれたよね。
愛想を振りまくのが上手い君は
色んな人に気に入られて
沢山名前を貰って
羨ましい限りだったよ。
私が引っ越して2日目で
君はまだまだ寂しい思いは
してないと思う。
私は私の進んだこの道が
間違いじゃなかったって。
本物だったし本気だったって
いつか言えたらいいなと思って、
毎日頑張ろうとしてるよ。
"Good Midnight!"
次ネオに会える時
それは多分
私が挫折した日か
私が胸を張って生き始めた日。