君と出会った日。
それは君の名前を呼んだ日。
全身真っ黒で
野良にしては綺麗な毛並みな
黒猫の君。
君は名前をいくつも持っていたよね。
クロ、キチ、マメ、ヨウカン。
他にも沢山。
私はネオって呼んでたけど
君はどの名前が
1番馴染みがあったのかな。
聞くのを忘れちゃったなぁ。
お気に入りの店で
焼き鳥を注文し終わった時、
いつも小さな窓から君の姿が見えた。
君が見えなきゃ
1日が終わった気がしなかった。
雨の日は私を店の中で出迎えてくれて
店が休業になった時は
近くの公園の隅で
じっと待っててくれたよね。
愛想を振りまくのが上手い君は
色んな人に気に入られて
沢山名前を貰って
羨ましい限りだったよ。
私が引っ越して2日目で
君はまだまだ寂しい思いは
してないと思う。
私は私の進んだこの道が
間違いじゃなかったって。
本物だったし本気だったって
いつか言えたらいいなと思って、
毎日頑張ろうとしてるよ。
"Good Midnight!"
次ネオに会える時
それは多分
私が挫折した日か
私が胸を張って生き始めた日。
眠い眠い。
最近コアラよりは少ないけど
近いぐらい寝てるかもって
そのぐらい眠たい。
前までは
2時間寝っ転がって
布団かぶっても寝れなかったのに。
人体ってムズカシイ。
気分屋で力加減が全くできなくて、
よく喋って動かなきゃで、
時には好きだと思うものを
封じて生きなきゃいけない。
睡眠だって操れない。
もう少しだけ
何かを操作できて
もう少しだけ
生きやすかったらって
毎晩考えちゃうけど
眠くてすぐ寝るからあんまり意味は無い。
"Good Midnight!"
眠れるようになったのは
多分やさしい雨音に包まれたから。
ちょっとしたことで
案外人はちょっと変われちゃう。
葉が色付いた頃。
部屋の隅ですすり泣いてた。
息を吸うのも忘れるくらい。
冷たくて深い色の水が
部屋を満たしてるみたいで、
すごく苦しかった。
なんでそんなに泣いてたのか
もう覚えてない。
まあ、
寂しい、不安、とか
そこら辺だと思うけど。
もう私の人生で
これ以上泣く日なんか
ないだろうなって思ってたのにさ、
1日中ゴロゴロできるくらい
暇な日に
大好きな曲を歌ってたら
枯れるぐらい涙が零れたんだよ。
いつか幸せにって
そのいつかのために
涙流すのかなぁって
よく分からないことで泣いて。
もう寝たいのに
明日は?明後日は?
1週間後は?1ヶ月後は?
色んな考えがぐるぐる渦巻く。
胸がきゅっとなって
喉が渇いて
また涙は生まれてくる。
"Good Midnight!"
どうせ100年後の今頃には
死んじゃってるんだからって
歌じったら
涙でしょっぱいなぁって。
人にとって都合が悪いことは
絶対しないように。
従順にするように。
無駄に自我を晒さぬように、
話さぬように。
分からぬように。
ナイフは右手、
フォークは左手で
真っ白なお皿に乗せられた食べ物を
行儀よく食べていく。
無駄に着飾られた料理。
食べたらどれも一緒なのに。
ってそんなことは
思っても口に出さぬように、
飲み込むように。
吐かぬように。
人と話す時は敬うように。
口を閉ざさぬように。
笑わすより笑われるように。
どんな時も笑って愛嬌振りまくように。
自分と人を同価値にする
友達という関係にしないように。
いつか全てを吐いてしまいそうなくらい
不味くて着飾れた料理を
ナイフで小さくして
フォークで詰め込む。
ギチギチと締められたコルセットのせいで
余計吐きそうだ。
我慢と飲み込むことは同じこと。
反抗と吐き出すことは同じこと。
"Good Midnight!"
時間はかけないように。
誰一人傷つけぬように、
虐めぬように。
殺さぬように。
私は大丈夫。
もう大丈夫。
出された食べ物を
フォークで食べる。
チョコレートをそっと包み込んで、
飲み込んで。
ずーんと気分が沈む木曜日。
あと1日で土日が待っているというのに
遠くて遅くて眠くて
何にも手が付けられない。
多分私は
大きな壁に当たった時、
壊すのでも
登るのでもなく
ピッタリとくっついて
石みたいな冷たい壁だー、と
よくわからないことを言うんだと思う。
瞬きすると外は暗くなる。
お得意の時間移動、別名、
睡眠をしたのだ。
とぼとぼ冷蔵庫まで歩き
ミルクティーをとって飲む。
毎日の終わりの楽しみが
ジュースを飲むことだけというのが
なんとも言えない。
身体は鉛みたいに重くて
鉛がどのくらいかは正確にわからないけど…、
ベッドに寝そべるだけで
溺れてしまいそうだった。
お気に入りの曲ばかり集めたプレイリストを
まだ眠くてしょぼしょぼする目を
擦りながら再生する。
しかしどれも今日の気分じゃない。
それでも聴き続けたのは
多分ただ暇だっただけ。
どこにでもありそうな曲ばっかり。
お気に入りの曲ってのは
結局その日の気分で変わるんだなぁと
目を瞑って思った。
あの曲が流れるまでは。
たまたまプレイリストが終わって
ランダム再生に変わっただけ。
それなのに
歌詞もリズムもどストライク。
しんみりした日でも全然聴けちゃう
ポップな感じの曲だった。
すぐプレイリストに入れて
何回もリピートして
眠りにつく瞬間まで
私の耳は音楽を聴いていた。
"Good Midnight!"
朝、顔は変わってない。
気持ちだけは昨日と違う私。
今日こそ負けない。
この1日頑張ってみせる。