霞んだ空が広がる日。
私はなんとなく音楽を聴いていた。
起きるのも億劫で
寝っ転がりながら。
本を読むのも、
字を書くのも人より遅い私は
早くしようと思えば思うほど
他のことが疎かになった。
雨上がりのある日、
気分転換に水族館に行った。
そこで気がついたんだ。
この水槽にいる魚もペンギンも
クラゲも、
この中が全てで
なんで生きてるかすら分からずに
生きてるんだって。
その全てを常に誰かに見られて
どこかの誰かが金を払って来る。
知らない方が幸せってこのことかなって。
少し楽になって帰った。
"Good Midnight!"
そんなことも忘れた頃の日
空は青い青い水色で、
死にたくて、泣きたくて、
死にたかった日だった。
いつも思い出す
香水の匂いはsweet memories。
コアジサイか何かの
花の成分が書いてあった。
販売したての頃は
3日で3億個売れたと聞いた。
私も愛用してた。
本の栞に付けたり、
スマホにつけたり。
私って存在がわかるように
コアジサイで私がわかるように
身近な物にだけつけた。
そしたらだんだん
嫌なことがあってもなくても
ぼーっとしてたら
ああ、私って
コアジサイなんだなーって
思うことが増えた。
余計な考えはいらない。
ただ生きるために水を飲んで
太陽を浴びて咲くだけ。
たまに甘い香りを出して
周囲に気づいてもらうだけ。
コアジサイの中でも埋もれてる私を
見つけてくれる人なんて
この世にいないと
とうの昔に気づいてるから。
"Good Midnight!"
人間も変わらないよなってよく思う。
ただ生きるために食べて
人と話してみてるだけ。
たまに甘い言葉を言って
周囲に呼びつけるだけ。
ぺらっとめくった本から
ふわっとコアジサイの香りがした。
宇宙は宇宙服がないと
生きていられない。
今日は天気がいい。
けど夕方から雨が降るって
天気予報でやってたから、
私は少し早めに歩き出した。
空気は窒素、酸素、二酸化炭素で
できている。
気分がよかったから
風と歌を歌いながら
帰り道を歩く。
シャボン玉飛んだ。
屋根まで飛んだ。
屋根まで飛んで
壊れて消えた。
パスタを湯掻くのは2分で十分。
次の歌詞を忘れて
私はまた最初からループしようか考えた。
考えたけどやめた。
漫画を売れば10円。
だって面白くないから。
もう歌ったのに
また歌うのは全然面白くない。
音よりも光の方が早い。
だから私はもう走って帰った。
水を一気に飲んで体温を下げる。
その頃にはもう雨が降ってた。
水金地火木土天海。
"Good Midnight!"
ぽろっとこぼれた言葉はそう、
天王星って綺麗だよなぁ。
…ジーッ、…ザザッ、こちら202。
ネブラスオオカミの目撃情報があった
三三峠にいます。
ネブラスオオカミがいた軌跡は
特に見当たりませんが、
引き続き様子を見たいと思います。
…プツンッ。
…ザーッ、こちら202。
ネブラスオオカミの足跡を発見。
小柄な体型と見られますが、
少なくとも3mはあるかと思われます。
引き続き様子を見たいと思います。
…プツンッ。
ギーッ、ガガッ、こちら202!
ネブラスオオカミから
少女になった所を目撃しました!
応援を要請します!
繰り返します!
応援を要請しま…プツンッ。
"Good Midnight!"
…ジーッ、ザザッ、こちら203。
ネブラスオオカミの目撃情報があった
三三峠にいます。
ネブラスオオカミがいた軌跡は
特に見当たりませんが、
引き続き様子を見たいと思います。
どうも私は
友達のことを友達と思っていないらしい。
好きになれないし、嫌いになれない。
矛盾だらけで自分に腹が立って来る。
でも法則的なものを見つけた。
都合のいい時だけ好きで
悪い時だけ嫌い。
それ以外は知人。
そんな感じ。
私も相手もこの関係を
友達と呼ぶんだと
認め合っているんだと思ってたら
そうではなかったらしい。
お茶したり、恋バナをしたり、
誕生日プレゼントを贈り合ったり、
他愛もない話ができる仲を
友達と言うんだと。
私は自己中と言うんだと。
そう面と向かって言われた時
なぜか私はムカつかなかった。
その通りだと納得しちゃったから、
私には友達は作れないんだと思って
関わるのを辞めた。
人と話すのは友達への第一歩。
話し方すら忘れかけていた頃
1人の少女に出会った。
白髪の美しい少女。
私の全てを見透かしたように話し始めた。
ボクに友達なんかいないよ。
オオカミは一匹じゃ、寂しいんだ。
好んで一匹になってるわけじゃない。
カッコよくもなんでもない。
だから群れで過ごすんだ。
ボクらは親元を離れて
一匹狼となって寂しかったから
知らないオオカミと共に過ごして
群れとして生活してるんだ。
ねぇ、キミもどう?
キミも一匹だ。
少女の話は
よくわからないけど、何となくわかる。
少女がくるっと回ると
ネブラスオオカミになった。
キミもなろうよ。
"Good Midnight!"
暖かくて自己中心的でもいい
白雲峠にいるボクの群れに。