るに

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12/29/2024, 6:10:10 PM

首にコップのように小さく、
壷のようなものが左右についている人に出会った。
やっと生き方を覚えた頃のことだった。
その人は割り箸で叩いて
楽しそうに音を聞いていた。
私は普通を手に入れたてだったから
その人の顔に映る輝いたものが
眩しくて、眩しすぎて
離れて見ていることしか出来なかった。
綺麗な紅色のショールを巻いて
その場から立ち去る姿を横目に
みかんを買って食べた。
思ったより酸っぱくて
口の中を取り出したくなった。
もしも私が
あの人のようになれるなら
優しい人になってみたい。
飛び切りの優しいを届けたい。
まだ曖昧でぼやけてるけど
私は私を信じておく。
最後のみかんを食べて
何にでも役立ちそうなことをした。
体力作り、睡眠時間、栄養摂取
身体から作ろうと毎日必死だった。
次にその人を見かけた時は
やっとコミュニケーションの取り方を覚えた頃だった。
勇気なんかいらないと投げ捨てて
声をかけた。
裏返る話し声は震えてる。
でもその人は
落ち着いて受け止めてくれて
あんなに酷い声だったのに
歌を歌うことを勧めてくれた。
一度歌ってみようと思うことがあったが、
緊張で心臓が止まりそうだった。
顔色で察してくれたのか
その人は壺のようなものの切除手術をするか
悩んでることを教えてくれた。
似たもの同士とはちょっと違うけど、
緊張とか悩むのは一緒で
この人も人なんだなと思えた。
翌日その人の壺のようなものに
"Good Midnight!"
というラベルが貼られているのに気づいた。
墓場まで持っていくことに決めたようで。
その人らしくて嬉しかった。
そんなその人を見ていたら
歌うか歌わないかだけのことで
もじもじしてる自分を
蹴っ飛ばしてやりたくなった。
吹っ切れて歌うことを決めた私は
その人と前より仲が良くなった気がした。
前よりみかんが甘い。
優しい歌を世界へ送り出して
どこに居てもその人へ届くように。

12/28/2024, 3:27:14 PM

手足が冷たくて
ちょっと息を当てただけで
凍りそうだった。
冬休みなんか
あるかないかみたいなもので、
あっても無いみたいな。
ツユさんの曲をリピートして
考えを止める。
ツユさんは12月31日に曲を消してしまう。
考え直して欲しいとか、
私みたいにならないでとか、
そういう曲は大嫌いだったのに
ツユさんの曲は違った。
MVの絵も素敵で
憧れとはまた別だけど
おすすめの曲を聞かれたら
10分悩むくらいは好きだった。
初めて出会ったのは
「くらべられっ子」。
私は少し年の離れた姉と
比べられはしなかったが、
姉はサボり上手で
口癖は「たまにはやりなよ」
まるで自分がずっとやっていたように言う。
6割私がやってるのに。
そんな姉がいるからか、
「くらべられっ子」はよく聴いていた。
最後のサビが特に良くて
クソみたいな日でも
まあ、明日頑張るか。ってなれた。
曲を削除すると聞いてから
毎日毎日ツユさんの曲を聴いた。
元々2曲に1曲は
ツユさんの曲を聴いていたけど、
全部ツユさんで耳を埋めた。
心がポカポカしたし
心地がよかった。
聴けなくなるのは寂しいけど
ツユさんが決めたことなら
私も納得できると思った。
"Good Midnight!"
音楽とか
趣味とか
推しとか
結局人生の鎮痛剤でしかないから。
あるかないかみたいな冬休みの中で
何をしたいのかもわからず
溺れるように眠る。

12/27/2024, 6:05:39 PM

私は手ぶくろが昔から嫌いだ。
偶然かもしれないが
手ぶくろを付けたり
近くにあったりすると
ロクなことがない。
財布を無くしたり
3回連続で転けたり
家を出た瞬間雨が降ってきたり。
ある日、
横断歩道を渡っている時
ふと白線の横を見ると
手ぶくろが落ちていた。
あ、マズイ。と
思うまもなく
トラックが私を跳ね飛ばす。
両手脚骨折。
それだけで済んだのが奇跡とでも言おうか。
入院生活は慣れなかった。
病院の匂い、人の話し声、
薬の効果が切れて泣いてる人の叫び声、
味の薄い食事、消灯時間が21時。
とにかく全てが気になった。
毎日毎日
こんなところで寝ているだけなど
頭がおかしくなってしまう。
変なところで骨が折れてしまったので
軽い手術をしたのだが
失敗され、
一生両手脚がこのままかもしれないと言われた。
ふざけるなと思った。
そして昨夜
焼けるような痛みで眠れなかった。
"Good Midnight!"
死期が迫ってくるのを感じた今日。
苦手な従兄弟が
手ぶくろをお見舞いで持ってきた。
私は昔から手ぶくろが嫌いだった。
やっぱり手ぶくろは嫌いだ。

12/26/2024, 4:17:30 PM

ねこ。
この指輪見える?
あーうん。
前から話さなきゃよね。
ちょっと前にね
変わらないものはないの。
私は貴方にもう少し変わって欲しかった。って
喧嘩してる人を見たの。
確かにこの指輪も
いつかは錆びて付けなくなるのよね。
小さい頃はお子様ランチだったのに
いつの間にか特盛を頼んだりしちゃって。
寒くて霜焼けばかりなっていたのに
最近12月ってこんなものだったかしら?って
よくなるのよ。
デジャブも増えたわ。
本当にこの世に
変わらないものはないのかもしれないわね。
全部変わっていくの。
お気に入りだったあのお店は閉店して
大好きな友達は引っ越して
適応するには
私も変わらなきゃでしょ?
なれないものになりたがりな私にとって
持ってたものを取り上げられて
要らないものに交換された気分だわ。
余計なお世話よね。
でも変わらないと
変わらない方がおかしいって言われてしまうの。
喧嘩してた人みたいに。
無理してないか気にかけてもらえる
あの子が羨ましく思ってしまうこともあるわ。
でもそれはちょっと違うんじゃないかと思って
私は私で頑張ってみたの。
ねぇ、ねこ。
貴方は私のことが
どう見えているの?
返事が返ってこず、
重たい瞼が閉じようとした時
たまにはいいじゃん、楽に行こうよ。
そんな声が聞こえた気がした。
気ままねぇ、ねこ。
でも私
貴方がさっきまで泣いてたように見えるわ。
ええ。
私は泣いたわ。
寂しさか嬉しさかわからないけど。
そう。
その曖昧な感じ、いいわね。
気に入るわ。

12/25/2024, 2:40:54 PM

人生なんて余るほどないし
たかがクリスマスの過ごし方で
クリぼっちだの
リア充だの
知りません。
寒くなると時間が早くて
すぐ年を越してしまいそうなので
バス停に向かい歩いています。
バス停の方から来てくれればいいのにな
なんて意味が無いことは少しだけ。
エアコンの代わりにかき氷。
こたつの代わりに愛猫を。
何度も見えないフリをしてきた
届きそうで届かない自分。
本音は吐き出せないから生まれるものなのに
誰かに話せるなら
それは本音じゃない、
空元気かもしれないなんて
私また嫌いなことを。
ルーズリーフに書き留めた思いは
墓場まで持っていって
ビリビリに破いてやります。
宇宙喫茶で
そうしたように。
"Good Midnight!"
未知の世界が広がってる?
想像力は無限大?
そんなことを言ってる間に
眠くなってきますよ。

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