2年ほど前から仲がいい
ネットで作った友達、
通称ネッ友。
そのネッ友ちゃんから
オススメしてもらった小説を買いに行った。
本屋さんは目が惹かれる漫画や
小説ばかりで、
毎回財布の中身を
根こそぎ持っていかれそうになる。
スマホを取り出し、
気になる本にカメラを向け
写真を撮る。
メモのアプリを開き
どこらへんにあったかを書く。
右手の薬指にはまっている
錆びた指輪からは
小銭の匂いが漂ってきて、
なんとなく外したくなった。
人の足音、話し声、
全てが五月蝿く感じて
イヤホンを耳につける。
目当ての小説を見つけたので
手に取りレジへ駆けていく。
明日は用事があるので
この本は読めない。
でも買っただけで読んだ気になって
ちょっと満足している。
下を向きながら歩き、
転けそうな足取りからバランスをとっていく。
ワッフルを買い、
食べながら帰っていく。
髪を解くと
何かから開放されたような
安心感が広がる。
何もしなくてもお腹は空くし、
夜は眠くなるし、
嫌なことは嫌だなぁって思うし、
眩しかったら目を細めるし、
朝はまだ寝ていたいって思う。
でも漫画も小説もアニメも
面白くて
ずっとここにいたくなる。
明日は読めないけど、
今日なら読めるかも、と
小説を開く。
"Good Midnight!"
ありがとう、ネッ友ちゃん。
この本、すごく面白かったよ。
今度また語ろうね。
私は誰かの特別になりたかった。
誰かに特別にして欲しかった。
そのために友達全員と
平等にフレンドリーに接した。
八方美人すぎて
自分でも気持ち悪く感じた。
裏の顔がありそう、
何をしても怒らなくて逆に怖い、
そんなことを言われて
結局誰もいない部屋で
孤独にまみれていた。
誰も違う感じがしたり、
みんないい感じがしたり、
気持ちはいつも曖昧で
境界がわからない。
いつかに読んだ
小説のセリフを思い出した。
死にたい、愛されたい、死にたい。
確か、
夫が亡くなって、絶望して、
育児放棄した女性のセリフだったかな。
私には愛する人すらいないっていうのに。
好きだとわかる、
愛してるとわかることは
誰にでもできることじゃない。
私にはできなかった。
ぼやぼやっとしていて
何も変わらなさそうな感じがした。
虚無な夜を過ごす時もあれば、
泣き叫びながら
布団を被る夜を過ごす時もあった。
人に飢えているみたいで
吐き気がした。
自己嫌悪が激しかった。
行かないで。
どこかの誰かさん。
私を置いて行かないで。
連れてって。
どこまでもついて行けるの。
私、ここじゃないどこかへ行きたいの。
"Good Midnight!"
イベントも何も無い今日。
適当に漫画を買って
ラッピングして
深夜に適当な家の窓に投げ込んでいく。
漫画で人が幸せになれるかって言ったら
そんな事あるはずないけど、
きっといる。
この変なプレゼントを喜んでくれる人が。
朝方、
適当に散歩していると、
うええおぉうおあああ!!!
という声と
あ、これ好きいいい!!という叫び声が
私が漫画を投げ込んだ一軒家から
聞こえてきた。
ああ、
私、まだ大丈夫かも。
朝日が眩しくて
目を細めた。
また忘れ物に気づかずに
歩道橋を渡っていた。
メモに書いても絶対何か忘れる。
昼ということもあって
ポカポカして眠くなる。
近くの道路から排気
ガスの匂いが鼻を通り頭を覚ます。
雨が降りそうな灰色の雲が
私の忘れ癖をからかいに来たように
上に広がっていく。
なんだか全てがグレーな日。
やらなきゃいけないことも詰まっていて
違うことをしたい気分。
とりあえず家に帰って
ダル着に着替えた。
なにか映画が見たくて、
アマゾンプライムで
「空の青さを知る人よ」を検索し、
時間を見て再生した。
この映画はちょっとだけ複雑な恋愛関係で、
初めて見た時は
何がなんだかわからなかった。
でも
やることがありまくりの今なら
よくわかる。
詰まってるからこそわかるものがある。
多分数日間はこの映画に
影響されっぱなしかもね。
時計を見ると
既に23時。
今から晩ご飯を食べても
やることは出来るだろうか。
結局お風呂を上がった後に
漫画を読み始めてしまい、
午前2時になった。
これで最後にしようと思い
手に取った漫画は澄んだ青色の表紙。
"Good Midnight!"
が合言葉。
今日も忘れ物をに気づかずに
歩道橋を渡る。
上には
どこまでも続く青い空が
広がっている。
いや、寒っ。
私は天気予報を天気しか見ない派だ。
昨日まで夏のような暑さだったというのに
今日は一気に気温が下がったみたいだ。
ショッピングモールではちらほら
秋服と冬服を見かけた。
そろそろ衣替えかなぁ。
私が好きなお店は秋服が可愛い。
丁度近くを通るので、
中に入って見てみた。
森林や夕焼け、真夜中のような
3種類のグラデーションのスカート。
紅葉が描かれたアシンメトリーワンピース。
目に入るもの全部が可愛くて、
1時間迷った。
結局、
真夜中のようなグラデーションのスカートと
上に羽織るものを買い、
トイレで着替えた。
スカートは少し厚い布の上にレースがあり、
暖かかった。
トイレの鏡で15分は見た。
このスカート、
絶対私の大好きな漫画の
ある一言がすごく似合う。
"Good Midnight!"
今はまだ夕方だけど
もう私の心は静かな真夜中。
間違えたもの、
さてどうしよう。
無かったことにするには
時間と力が必要だ。
こんな夜中に作業などしたくない。
でも私はしなきゃいけないことをためている。
後回し後回しで気づけばこんなことに。
午前2時54分。
すごく眠くなってきて、
早く寝たかったけど
しなきゃいけないことをしようか、しまいか。
するんだったら何からしようか。なんて
ずっと考えているからだ。
そうこうしてるうちに
うとうと…。
目が潰れるまでゲームしていたいって思うし、
声が枯れるまで叫びたいって思うし、
永遠に眠るように寝たいし。
いろんな感情が混ざりすぎたコレを
人は混乱や、焦りととらえるらしい。
はてさてねむいぞ。
うとうとしながら部屋を眺める。
"Good Midnight!"