運命って
結構どこにでも転がってる。
特にSNS。
一瞬で
あ、推させていただきます。ってなった
あのキャラ。
操作ミスでどっかいっちゃって、
すごい喚いた。
雨音が外から聞こえてきて
だんだん強くなっていく。
あのキャラともう一度
巡り会えたら…なんて
淡い期待も出来ない。
まあ、うん。
例えば
ちょっとした絵を描く場面があって、
自分より絵が上手い人たちが
楽しそうに話しながら、
笑いながら描いていく。
自分は遅筆なうえに
ながら描きなど出来ず、
その輪に入れず、
ただ目の前でそんな人たちを見る。
例えば
芸術鑑賞として
ジャズの生演奏を聴いた時、
自分より弾くのが上手い人たちが
パフォーマンスを入れながら
みんなを楽しませながら弾いていく。
自分は才がないうえに
弾ける曲も少なく、
あの舞台に立つことすらないのだろうと
ただ立ち尽くす。
消えたいなと思うのは
こんな些細なことでいい。
私はただの
なれない者になりたがりな
落ちこぼれなのだ。
成功してる人や
自分より上手い人を見ると
妬ましく思い、
自分の小ささを実感し、
消えて無くなりたいと思う
悲しき人間。
こんな私に推されて嬉しい人なんて
いるわけがない。
だから私は2次元のキャラしか推さない。
なのにあの子は
ネットを彷徨い
逃げちゃった。
もしかして2次元のキャラも
私に推されたくない?
被害妄想ばっかり浮かんできて
今すぐ脳みそを取り出して
丸洗いしたくなる。
そもそも私の好きなものって
なんだっけ。
長い髪の毛、ゲーム、スマホ、小説、漫画、
"Good Midnight!"…
そんなことをボソボソと呟いていると
ぬいぐるみが目に映った。
あ、この子だ。
さっきの子。
もう推してたっけ。
また見とれたってことか。
あぁ、私、
どうしたらいいんだろう。
もう生き方、わかんないよ。
ベッドで丸くなり、
たくさんの涙を零す。
フリーレンのぬいぐるみを抱えながら。
チェリーって言われても
ピンと来ない。
さくらんぼって言ってくれなきゃ。
大事な人がそのゲームを辞めて、
もう私も辞めようと思ってた時
ナンパたらしが声かけてきた。
なにしてたのって。
めんどくさくて適当に答えた。
そしたら
いいね、いこ。って
私にフレンド申請してね、
連れ出してくれた。
初対面なのにタメ口だったのは
ちょっと…ってなったけど、
フレンドリーでいいよね。
ただフレンドがいないぼっちかと思ったけど、
いつもこのゲームで何してるの?って聞いたら
ナンパして飽きたら放置してる。だって。
ただのクソ野郎でしょ?
しかも超嘘つきなのよ。
どれがホントかわかんない。
全部まぁ、嘘だけどね。って言ってくる。
でも私、
感謝はしてるの。
このゲームには色んな人がいて、
色んなことを話してるって。
ま、その人は気が合う訳でもないし、
ブロックかなーと思ってるわ。
そもそも気が合う人とフレンドになるなんて、
ただの奇跡よ。
私の大事な人は
その奇跡の人だったけどね。
すごく気が合う楽しい人だった。
あの奇跡をもう一度なんてワガママ言わないわ。
今、誰かにそばにいて欲しいだけ。
ナンパたらしクソ野郎を
大事な人の代わりにするだけよ。
隣を貸すだけ。
よくテレビで
甘酸っぱいチェリーみたいな恋
みたいな事を聞くけど、
さくらんぼの方がいい。
大事な人とした「ロミオとジュリエット」ごっこ。
あの時かな。
ゲームをしてきた中で1番楽しかった。
あれが恋だったのかな。
あんな楽しい毎日が
続くと思ってたんだけどなぁ。
スマホの容量無いから辞める、か。
あの2年は
スマホの容量で無くなっちゃうんだね。
でもまだ信じてる。
戻ってきてくれるって。
今はただ、
"Good Midnight!"
久しぶりの実家は
あまりに退屈だった。
ド田舎にある私の生まれ育った家。
そんなに思い出は残ってない。
多分取り壊されると言われても
ふーん。で終わるだろう。
でも私は
この街が好きだ。
ショッピングモールはないが、
喫茶店くらいならある。
レトロな雰囲気のこの喫茶店は
夕焼けがよく見える。
たまに「たそがれどきだなぁ」
なんて言ってみたりして。
こんな洒落た言葉似合わないけどね。
今日は母の病院の付き添い。
ちょっと成人した風に話してたけど、
実はまだ16ね。
久しぶりの実家って言うのは、
いつも喫茶店寄ってたから
夕方家にいるのが久しぶりってことね。
ちょっとややこしい?
まあいいや。
病院の入ってすぐの靴箱の横。
「ご自由にお持ち帰りください。」
と書かれた紙と共に置いてあるのは
一輪の花を飾る用の小さい瓶。
ぐにゃぐにゃとウェーブしていて
とても綺麗だ。
ここの瓶はいつも1つ持って帰っている。
スズランを飾るんだ。
カップが逆さになったみたいな花。
お気に入りの花。
その瓶に
"Good Midnight!"
って書いたラベルを貼って
自分の部屋でずっと眺めて。
時々風が窓から入ってくる。
もう10月か〜。
もみじの葉が散るまで
あとどのくらいだろうか。
昔からパズルが苦手だった。
それでもパズルをし続けるのは、
飾った時に綺麗だから。
大してピースが多くないパズルを飾るのは
すごく楽しい。
今のお気に入りは
手前でイルカが泳いでいて、
後ろに遊園地と月があるパズル。
それは外側が深い青色で
内側が金色の額縁に入れてある。
このパズル、
電気を消したら光るんだ。
今日ついに立体パズルを買ってみた。
「魔女の宅急便」のジジを買ったのだけど、
中々難しい。
ネジとかも使うみたいで
もう頭がハテナだった。
どれも同じピースに見えた。
でも辞めない。
何かを続けて、
何かにハマって、
夢中になっていたい。
そうだ。
パズルを始めたきっかけは
人間関係に似てたからだ。
相性バッチリだったらハマるし、
全然違うなってなったらハマらない。
複雑な形をしてて
違うなって思った人とも
友達の友達の友達的な感じで
いつの間にか繋がってたり。
全部1つになる。
パズルをしてる間は
難しい人間関係も
手のひらの上で
まとめることができる。
きっと明日も
明後日も
来年も
20年後も
ずっとパズルが好き。
え?
冒頭で苦手って言ってたのに
なんで好きなのかって?
当たり前のことだと思っちゃうかもだけど、
苦手と嫌いは違うからね。
私は苦手でも好きになりたい。
好きになれるように努力するよ。
ま、立体パズルは難しすぎだけどね。
ちょいとアイス休憩。
ガラッと開けた冷凍庫から
ピノを出してパクッとひと口。
う〜ん、
"Good Midnight!"
この言葉、
今の空と
さっきのジジにピッタリ。
メガネがないと
なんでもぼやけて見えないのに
星だけは綺麗に見えた気がした。
服なんて気にしてなかったから、
今日はいつもより引き締まっている。
星が描かれた靴に一目惚れして
買ったはいいものの、
家から出ることなんて滅多にないので
困っていた。
そんな時バイト募集中のポスターが
いっぱい貼ってあるところを見つけた。
その中にあった
ポップアップ写真というものに目を惹かれた。
なんでも、
個性的な着物を作っている人が
ポップアップの写真を撮るために
誰かに着物を着てもらい
和風な部屋や道を歩いてもらいたいようだ。
場所に着くまでは
私服OKと書かれていたので、
星の靴とパーカーで
カジュアルな格好をして行った。
グラデーションが綺麗な
青色の着物を着せてもらい、
まずは道を適当に歩いた。
内股で歩くのがすごく大変だった。
次に部屋でお茶を飲んでいるところ、
和菓子を出しているところなど、
全て終わり
依頼人がお金を取りに行った。
静寂に包まれた部屋で
鳥が鳴いているのを聞いて、
バイト募集、今度からしっかり見よ。
と思った。
お金を受け取り、
家に帰る途中
ポップアップってなんだったかなと
スマホを開き調べた。
写真や文章の書かれた
商品の近くに置いてあるもののことだそうだ。
スクロールしていると
なんだか変なとこを押してしまい、
ある漫画のウィキペディアに飛ばされた。
よく見ると表紙が綺麗だったので、
そのページに居座った。
"Good Midnight!"
と、
ある人物が言うのだが、
その人と仲のいい人が考えた挨拶だった。
でもある人物はその挨拶がダサいと言い、
変えてくれと頼んでいた。
だが、私はお洒落でいいなぁと
ため息をついていた。
読み終わる頃には
私の中での考えは前とは少し変わった。
今度はこの靴とパーカーで
どこへ出かけようか。
この1回きりでは割に合わない。
もっと冒険に連れて行ってやるか。
この漫画の人たちみたいに。