くじら

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4/21/2024, 9:56:18 AM

彼女の部屋には水だけが入った水槽がある。

微生物を飼っている訳ではない。

「水の中の空気が好き、この音も」

ブルーライトに照らされた透明な水中に、エアポンプがコポコポと空気を送っている。

「何もいらない、これが好きなの」

4/19/2024, 3:11:48 PM



君がこのドアを開けて帰って来る3分後の未来。

辛く悲しい顔をしているなら
君の好きなマシュマロと珈琲を淹れて待ってる

嬉しそうな顔をしているなら
ワタシも嬉しくなる それだけ

いつも通りの無愛想な顔なら
それでもワタシは嬉しい 帰ってくるのだから

君が3分後の未来、何をしたいのか、何を思うのか時々分かればそれがいい

いつも見えちゃいけない 

時々がいい 時々じゃなきゃいけない

「もし未来が見えるなら」



もしも未来が見えたなら

FXで競馬で、あらゆる手を使って金を稼ぐ。

自分が事故を起こす未来が見えたなら、
その車に嫌いなあのクソを乗せて事故れば最高

自分が病気になる未来が見えたなら、
その前に女を抱きまくって、目障りな奴らをたくさん殺す なるべくたくさん

運命が決まっているなら
それはそれで楽しむ

決まってないなら
好き勝手に生きて死ぬだけ

善人も悪人も、未来なんていずれ死ぬだけ 

ただ、
マシュマロと珈琲を共に食べる時の幸せは、いつも変わらずに最高。

「もし未来が見えるなら」







4/18/2024, 8:46:19 PM

彼女は透明だった。
自らの色を消し去り
決して目立ち過ぎぬように自分を押し潰し、常に平凡を求める。

「目立ってはダメだよ、嫉妬や侮蔑のターゲットになる」
「会話も服装も習慣も好みさえも、一人ぼっちが怖いなら無色じゃなきゃいけないよ」

ワタシの中の魔女が忌々しく笑う

私は、無色でいることに必死だった

ある日、突然、私の中の魔女が死んだ。

やがて私は一人ぼっちになった。

それで良いの。

色を抑えられない私は、罪だったとしても

その方がかっこいいと思ってしまったから

(1人ぼっちになったのは、自己顕示欲と承認欲求を優先し、思いやりや気遣いを欠いたからではない事を、誤解されぬよう)






「無色の世界」

4/16/2024, 12:20:26 PM

「彼の膝に股がって、彼の歯を磨く事がワタシの夢」
そう言っていた彼女は、11月生まれのA型で、
看護師をしながら、某テレビ局の脚本家と不倫を始めてから2年が過ぎた。

調布駅前で、帰宅途中の彼女の姿を横目でじっと眺める中年男性は、家電メーカーの営業部に勤めている。
13歳の時、プロサッカー選手になるのが夢だった。
今、調布駅前で高校時代の友人と待ち合わせ中に、偶然見かけた女を頭の中で激しく犯す妄想をしていた。

彼には9歳になる娘がいる。
生まれつき視力の弱い娘は、幼稚園に入る時からメガネ生活だったが、明るく人懐こい性格で、誰からも好かれていた。将来はケーキ屋さんになるのが夢なんだと嬉しそうに話す。

「彼の膝に股がって、彼の歯を磨く事がワタシの夢」
そう言っていた彼女の、不倫相手が亡くなった。
彼には複数の愛人がおり、そのうちの1人が彼を殺害し、自らも命を絶った。

ケーキ屋さんになる夢を叶えた女の子は今、寝具クリーニングメーカー勤務の28歳の男と同棲している。
彼女のお腹の中には新しい命が宿っているが、男はその事をまだ知らない。

男の夢はない。
仕事帰りに、泥酔した女にぶつかった。
「今触っただろ!?この変態野郎!キモいんだよ!」
吐き捨てられた言葉を聞いた男が、頭の中に描いたのは、女性の頭の上に鉄骨が落ちてきて潰れるシーンだった。

「夢見る心」

4/15/2024, 8:39:52 PM

何もせず、届いた想いなど無い。

自分の想いが100%届いたことなど無い。

届かないから、必死で表現する。

届かないから、誤解され、後悔する。

届かないから、想いはとどまり、別の形となって溢れでる。

それがたまらなく好きだ

「届かぬ想い」

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