雪兎(きよと)

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3/28/2024, 12:48:46 PM

見つめられると


見つめられると、ギュッと胸の中心が苦しくなる。
貴方のその瞳があまりにもまっすぐで。
私は、嘘をついたのに。
貴方の事が嫌いだなんて、苦しい嘘を。

だってこうするしかなかった。私は、貴方より年上で、貴方の様に素直になれなくて、貴方には似合わない、そんな人間なのだから。
貴方は言ってくれたよね。
君はもっと自信を持っていいって。
だから頑張った。もっと自分を表現して、もっと言葉に表して。もっと、もっと―――

でもね、私気付いてしまったんだ。
貴方のためにと思うたび、私は無理をしていた事に。
やっぱり、私は私でしかなかったの。
太陽の様な貴方に照らされた月にしか過ぎなかった事。
月は自分では輝けない。
太陽が―――貴方がいるから、私は自分以上の自分でいられたの。
貴方の目に見つめられていたから、私も貴方だけをずっと見てきた。

でもそうやって、ずっと貴方を見ていた私だから気付いたのかもしれない。
貴方が、あの人を見つめる目が、私を見つめる目と違った事に。
あの人への、深い深い想い。
それはこぼれんばかりの、喜びの想い。
見たくなかった。知りたくなかった。貴方を、見なければ良かった。
だから、私から離れる事にするね。貴方が一番大切な人だけを見つめられるように。
お願いだから、もう私を見つめないで。





3/27/2024, 10:37:00 AM

My Heart

心が、ざわついた。
よりによって、何故今なのだろう。
スマホの画面を見つめたまま、私の身体は動きを止めていた。心臓だけがうるさく鳴っている。
どうして、どうして。
どうしてSNSアプリを開いてしまったのだろう。
知りたくなかった、あの人の近況なんて。
知りたくなかった、あの人が―――結婚したなんて。

誤タップしたアプリから、私は好きだった人の結婚を知ってしまった。
震える手が、ゆっくりと画面をスクロールしてゆく。
やめて、これ以上読まないで。
心と身体は別々の動きをしている。私はただ、情報を目で読み込む機械と化していて。
そこにはただ、キラキラとしたその瞬間が写真として綴られている。
私じゃない、他の人との眩しいまでの貴方の笑顔があふれていた。
画面が、ぼわりと歪んで、ポタリと水滴が広がった。

―――ああ、私は泣いているんだ。
頭はぼんやり他人事の様に。
心臓は早い鼓動を繰り返し。
心は、泣いている。

ゆっくりと画面を閉じ、私はスマホの電源を切った。
心の電源も切ろう。そうして瞳をとじて。私は―――