雪兎(きよと)

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見つめられると


見つめられると、ギュッと胸の中心が苦しくなる。
貴方のその瞳があまりにもまっすぐで。
私は、嘘をついたのに。
貴方の事が嫌いだなんて、苦しい嘘を。

だってこうするしかなかった。私は、貴方より年上で、貴方の様に素直になれなくて、貴方には似合わない、そんな人間なのだから。
貴方は言ってくれたよね。
君はもっと自信を持っていいって。
だから頑張った。もっと自分を表現して、もっと言葉に表して。もっと、もっと―――

でもね、私気付いてしまったんだ。
貴方のためにと思うたび、私は無理をしていた事に。
やっぱり、私は私でしかなかったの。
太陽の様な貴方に照らされた月にしか過ぎなかった事。
月は自分では輝けない。
太陽が―――貴方がいるから、私は自分以上の自分でいられたの。
貴方の目に見つめられていたから、私も貴方だけをずっと見てきた。

でもそうやって、ずっと貴方を見ていた私だから気付いたのかもしれない。
貴方が、あの人を見つめる目が、私を見つめる目と違った事に。
あの人への、深い深い想い。
それはこぼれんばかりの、喜びの想い。
見たくなかった。知りたくなかった。貴方を、見なければ良かった。
だから、私から離れる事にするね。貴方が一番大切な人だけを見つめられるように。
お願いだから、もう私を見つめないで。





3/28/2024, 12:48:46 PM