隣に居た彼が驚いていた。
一定の方向を驚いた顔のままで見続けている。
気になってその視線の先を見ると何もなかった。
「なにもないじゃん。」と彼にホッとしながら声を掛けると震える声で「あの女がなんで生きているんだ。」とボソッと言った。
街の明かりは照らしてる
男の暴力を
あの子の母親の涙を
男の情事を
あの子の処女の喪失を
全て照らしている
お前等の犯罪と被害者の悲しみを
私に友達はいない、だが友達の思い出がある。ここだけ言うと話に食い違いがある。だがこう考えると食い違いはなくなる。
友達は事故で死んだ、だが友達の思い出はずっと残る。
こう言うことだ。
友達が電車の前に飛び出た時の笑顔も頭の中に残り続ける。
この道の先に何があるのだろうか。
それは行ってみないとわからない…
当たり前だ。
だが子供というのは本能に従うのだろう。
行方不明となった。
探した、警察にも行った。
だが見つからない。
私はもう生きる事に疲れてしまった。
ニュースに流れた途端、ネットでは私の誹謗中傷。
近所ではヒソヒソと話し声が聞こえる。
そして今日、家に強盗が入った。
なんという運の悪さ。
だが今は死ねるなら何でもよかった。
わざと大声を出し、強盗に刺された。
その強盗の顔は居なくなった子供の顔だった。
私は知ってるの。
あの人が浮気をしていることを。
偶々買い物に行った時に見たの。
あの人はその女に笑顔を向けていた。
とても悲しくてその女を憎んだわ。
だってそんな笑顔私に一度も向けてくれたことなかったのに…
あの女にはそんな笑顔を向けるのね。
でもわかっているわ。
あの女に脅されているからよね。
だって私と貴方は、赤い糸で結ばれているもの!
うふふ、つい笑みが溢れてしまったわ。
でもなんだか彼、心なしか嬉しくなさそう。
何でかしら。
私と貴方が結ばれるのは運命なのに。
何でそんなに怯えているの。
もしかして、あの女に洗脳されちゃったのかしら。
絶対そうよ!
あの女を早く消さないと、彼をこんなに怯えさせるなんて!
とても酷いことをされたのね!
大丈夫よ。
私が守ってあげるわ。
うふふふふ…