いくら太郎

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6/19/2024, 2:50:16 PM

相合傘

あの子はいつも放課後に1人で黒板を使う。細くて白い指はマメだらけで、爪も少し黒くなっている。毎日何時間もシャーペンを握りノートの上を滑る手。この子はあまり目立たない子だから僕に触れるのは毎日この時間だけ。いつも書くのは西日が差し込んで少し色の変わったところ。そっと親指と人差し指と中指が添えられる。7画。7画。一息ついて、控えめに1画。割れないように気をつけてくれる。そういう子。どんな顔して書いてるんだろうな。僕は何度でも君の傘になるけど君を守れはしないから、いつか君が右肩を濡らせますように。
相合傘が本物になりますように。出来れば僕が消えちゃう前にね。

6/18/2024, 2:34:47 PM

落下


うっかり、みたいなね。よくあるんですよ。あの子も。まぁ僕なんかにもすぐに、ごめんごめん!って言ってくれるあたりは可愛いなって思いますけど。さすがに僕も許してやれない時もあるというか。何回か脅したりしたんですけどね。そんなに雑に扱われたら亀裂入っちゃってもう戻んなくなっても知らないぞって。まぁ僕ら片時も離れないんだから仕方ないっちゃ仕方ないか。日中も家でもなんなら寝る時も一緒だしな。たまのうっかりくらい許してやらないと。愛想つかされちゃったらいやだし。でも最近ちょっと僕の調子がおかしくて。すぐに体力無くなったり、目の前が真っ暗になったり、頭痛なんかもしちゃって、あの子と過ごせる時間ももうちょっとなのかなぁ。
、、、え?体がダメんなっても脳みそだけを入れ替えて生き続ける方法があるらしい??!君との記憶(メモリー)が消えないなら、、、


『ゴトッ』





「こんにちは」

3/19/2024, 4:52:50 PM

学校からの帰り道。普段は話さない人とたまたま帰る時間が被る。「一緒に帰る?」「う、うん!」曖昧な返事をする。お腹すいたね、とか。あの先生だるいよな、とか。たどたどしくも何となく心地いい会話。無言になると気まずいけど嫌では無い空気感。あっという間に分かれ道。「またタイミングがあったら一緒に帰ろう。」嫌じゃないんだなって安心感と次があるかもしれないときめき。別れてからもさっきの会話を思い返して、胸の高鳴りは治まらなかった。