まこここ子

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9/23/2024, 3:37:38 PM

 昔、このジャングルジムでよく遊んだじゃない。ケイドロ。ケイサツとドロボーに分かれた鬼ごっこ。逃げるドロボーをケイサツが捕まえて、ケイムショに入れるやつ。あんたも覚えてるでしょ?
 あんたはケイサツで、私はドロボーになることが多かったわね。最後まで残ったドロボーの私を捕まえるのは、いつもケイサツのあんただったわ。ケイムショに見立てたジャングルジムに入れられた仲間も助けられずに、ゲームが終わって。悔しかったわ、ほんとに。あんたから逃げきってやる!って、それを目標にして、毎日ランニングしてたこともあるのよ、私。でも、結局最後まで逃げられることはなかった。
 …わかったでしょ、これはリベンジなの。もちろん、他にも理由はあるわ。女の子らしく、宝石が欲しくなっちゃったとか。ちょこっと目立つことをしてみたかった、とか。でもそれ以上に、あんたがこの町の警察になったって聞いて、どうしてもリベンジがしたかった。そしてようやく、あんたを打ち負かすチャンスが来たわ。
 この私を捕まえて、ジャングルジムまで連れていってみなさい。せいぜい頑張りなさいな、ケイサツさん?

9/23/2024, 9:53:07 AM

 幼稚園児あたり、だろうか。ここに引っ越してきて一週間。近くに、たしかあったはずだ。二階建ての大きな建物、だだっ広いグラウンドにたくさんの遊具。いや、保育園だったかもしれない。まあどっちでもいいや。
 とにかく、そのくらいの年代の子どもが騒いでいる。そんな声で起こされて、時計を見ると朝の九時。寝坊した!……と思ったが、よく考えたら今日まで仕事は休み。なんだ、それならもっと寝れたかもしれない。しかし、この騒がしさでは眠れない。何をしようか。
 ……せっかくなら、自分も幼稚園児のころのことを思い出してみようか。まだダンボールの中に入ったままのアルバムを適当に開き、5歳のころの自分を見てみる。
 ○○幼稚園、✕✕組。笑顔で写る自分の隣にいるのは、三つ編みの女の子。あ、この子は。家が隣で、幼稚園に一緒に行って、帰り道の公園で遊んで、手を繋いで歩いて。
 初めてドキドキして、初めての好きができて、はじめて、悲しくなった。幼稚園を卒園する前に、遠くへ引っ越してしまったんだ。幼稚園児だからメールもラインも無くて、相手の引っ越し先の住所も知らないから、連絡もしていない。
 まだ、一緒に遊んだ日のことを覚えている。公園の木の葉の匂い、一緒に食べたおかあさんの梅干しおにぎりの味、砂場の砂がこぼれ落ちる感触、前歯が抜けたその子の笑顔。すべて鮮明に思い出せる。
 人の記憶で一番最初に忘れられるものは、声だ。もう10年以上は前のことなのに、外から聞こえる子どもの声に、その子の声が被って聞こえたような気がする。今日はなにする?おみせやさんごっこしよ!どろだんごたくさん作って、たくさん売ろう!
 ……もう、一生忘れられないんだろうな。次引っ越すなら、もっと静かな場所にしよう。