昨日より強い向かい風に吹かれて、私の体は推進力を失った。
前は見えていても、進んで行くのが怖くなってしまった。
このまま後ろを見て引き返せば、追い風に変わって私を今までと同じところに帰るのを助けてくれるだろう。
それでも私は振り返りたくなかった。
私は、高く広がる蒼い空を泳ぎたいから。
追い風に向かう時の方が、高く飛べるはず。
追い風に吹かれて飛ぶ木の葉より、風に抗い飛ぶ鳥になりたいから。
向かい風に向き合い、地面を強く蹴った。
幸せとはなんだろう。
高くて素敵なディナー?色んなところへの旅行?欲しいもの全てがあること?
裕福な人々がきらびやかな宝石を纏い、ブランド物の服で身体をデコレーションしている。それはそれは、満たされた表情で街中を闊歩している。まるでそれを、幸せだと言いたげに。
でも、きっとそれだけが幸せではない。
日常のささやかな喜びは、おそらく何より暖かな幸せだ。
欲しい本を買った。
私はひどく、満たされた。
なんて幸せなんだろう。
昨日何時に寝たか。
今朝の朝食は何か。
最近暇な時してることは。
そんなとりとめのない話を、ゆっくりしたい。
生憎、最近は課題の途中で寝落ちして、寝た時間なんて覚えてないし、朝食も食べる時間がないからとってない。そんな調子で暇な時間なんてない。
こんなに忙しいのはわたしだけかは知らないけど。
時間は何にも変えられないと、今更痛感する。
忙しいこのときを、いつかとりとめのない話として口にできるまで、もう少し頑張ろう。
喉が痛い。風邪かもしれない。
熱を測ると、37.8あった。朝からこれだと、昼間にもう少し上がるかもしれない。今日は学校に行かない方がいいかな。
そんな夢を見た。
頭も喉も痛くない。熱を測ってみても36.7しかない。ただ、言いようのない倦怠感が私の体を支配している。この様子だと、やっぱり今日も学校には行けそうにない。
もし本当に熱が出てくれたなら、こんな後ろめたさに襲われないでいいのに。
風邪なら、薬が効くのに。
昔はよく、友達とも両親とも手を繋いで帰ったものだ。
今は、そんなことしなくなったけど。
時々、あの時の温もりと安心感が恋しくなる。
夕暮れ、父と母の間で両手を繋いで、1番星を見つけて。
友達と下校中、手を繋いでぷらぷらさせながら、時折しゃがんでぺんぺん草を摘み取ったり。
あの頃に戻りたいことも増えたけど、思い出はそのままにしておいて。
1人、宙ぶらりんの手を少し握って。
定期に手を伸ばした。