思い出のプールはもう跡地になっていた
子供の頃に好きだった砂浜色のコンクリートも取り壊されると聞いた
だからじゃないけど
お互いの思い出をかき集めるように
海へ行こうよ
浮き輪に乗って流れるままに
波打ち際で小さな波を味わおうよ
ふたりで海へ行こうよ
青空の足もとからもくもくと大きく膨らんだ雲
夏の空の青さに映える真っ白な雲
きっとまた夕立ちが訪れるのでしょう
そのあとには湿っていて煌めく夜がやって来るのでしょう
眠りにつけばまたからっとした空気にかわり
ギラギラと照りつける太陽と眩しいくらいの青い空が
広がっているのでしょう
夏の空は大忙し
「あの頃」に聴いていた曲を
今になって聴いては蘇る
すべての思い出と感情
「あの頃」はたくさんあって
その分だけ曲もたくさんある
嫌なことも苦しいことも
胸が締め付けられることも
涙も悔しさも
曲が流れればタイムスリップしたかのように
いつまでも捨てられない
その曲たちは好きだから
ただ、「初恋」だけは
あまりにも好きで
あまりにも苦しい
私の初恋に永遠に添えられている
病室からはちょうど見えない花火
音だけが聞こえてくる花火
街の花火大会に行けなかった夏
もう慣れた左腕の点滴
子供向けのキャラクターがテープに描かれている
そのキャラクターが特別好きではないけど
見守られている感覚に癒されていた
絵を描いたり天井の模様を見たり
ただ寝転がって過ごした
決まった時間に運ばれてくる食事
おやつのたまごボーロが少し苦手だった
トイレに行くのが億劫だった
歩くのも辛かった
同じクラスの喘息持ちの子と廊下ですれ違って手を振った
退院の日の帰りのエレベーター
閉まる扉の向こうで
看護師さんたちが笑顔で手を振ってくれた
これは、小学二年の夏休みの思い出
“普通”の恋愛が出来ない。
結婚に憧れはない。
子育てとも無縁でいたい。
長いこと、自分以外に気を使ってきた。
イヤホンで音楽を聴く時間が必要。
仕事のレベルアップを頑張りたい。
だから、一人でいたい。