よいお年を、と言葉を交わした直後にコレ。
新年早々ド派手な開幕だけど、そうじゃない。そういうことじゃない。
~地震・津波~
(よいお年を)
【お題無視】
チリーン。
どこかでベルが鳴った。
私は吸い寄せられるように、音のした方に向かっていった。
──────
目の前にいる若い男がさめざめと泣いている。見るからに年季の入った車に乗っていたのは先日免許をとったばかりの高校生だった。今日は彼女と初めてドライブデートをする予定で、バイトを増やしてやっと手に入れた愛車で彼女を迎えに行く途中だったのだという。古ぼけた車体に初心者マークが輝いていた。
事故が起きたのは表通りではないがそこそこ広い、見通しのきく道路だった。運転初心者でも安全に走行できるはずの道だ。
だが、最近この道、特にこの事故現場付近での事故が多発している。
事故の“加害者”である車の運転手は、皆口を揃えてこう言った。
『あの建物から突然人が飛び出してきた。』
あの高校生も、ここで事故を起こした他の運転手たちと同様、運転上の過失は無かった。
彼は当日出かける前にも家族からも気を付けるように口酸っぱく言われ、また彼自身も、自分の運転技術が未熟であることを理解していた。大事な人を初めて乗せるということで、多少逸る気持ちや浮わついた気持ちがあったことは否定できないが、当日の車内記録から、彼はいつにも増して慎重を期して運転していたことがわかっている。
まだ若く、しかも免許とりたてで事故を、それも人身事故を起こしてしまった彼は不憫としか言いようがないが、卒業の前祝いとして家族から贈られたドライブレコーダーをつけていたことで彼の責任は最小限に抑えられた。それでも、相手の歩行者は死亡しているから、100:0で歩行者が悪い、とはならないのが現在の日本の法律だ。彼の心には、人一人の命を奪ってしまった、というトラウマがいつまでも、それこそ死ぬまで残り続けるかもしれないというのに。
白状しよう。
私は、なぜこの場所で事故が多発するのか、その原因を知っている。数年前、この場所にできた“ある店”。歩行者は全員、ここから飛び出してくるのだ。
警察も当然マークしているが、なかなか思うように捜査が進んでいないのが現状だ。
しかしこうしている間にも、不幸な事故は起こり続け、死者と哀れな加害者を生み出し続けている。
私はため息をついて、もう日も暮れた年の瀬の町を歩いていた。
そして、“ある店”の目の前に差し掛かったとき。
チリーン。
どこかで、ベルが鳴った。
(ベルの音/プレゼント)
なんてこった。
イブの夜だというのに。
予定が真っ白じゃないか。
「それ自分で言ってて虚しくないの?」
「うるせえリア充爆発しろ」
(イブの夜)
寂しさについて考えていたら
自分が寂しくなってきたのでもう寝る。
(寂しさ)
のすのす。ふみふみ。ふんふん。
「んー…なんだよ…」
にゃぁん。ぐるぐる。
「ったく…」
ぐいぐい。もそもそ。くるん。
「はい、よしよし。おまえさ、俺のこと冬専用の湯たんぽかなんかだと思ってんだろ。」
んなぁ?ぺろぺろ。
「(笑)一緒に寝る俺の気持ちにもなってくれよ。おまえのせいで動けねえから、朝から身体バッキバキなんだぞ。」
ぎゅっ。くいくい。むぅ。
「ふふっ、…まあいいか。お前のおかげで、俺も冬の湯たんぽには事欠かないからな。」
(冬は一緒に)