寂しさについて考えていたら
自分が寂しくなってきたのでもう寝る。
(寂しさ)
のすのす。ふみふみ。ふんふん。
「んー…なんだよ…」
にゃぁん。ぐるぐる。
「ったく…」
ぐいぐい。もそもそ。くるん。
「はい、よしよし。おまえさ、俺のこと冬専用の湯たんぽかなんかだと思ってんだろ。」
んなぁ?ぺろぺろ。
「(笑)一緒に寝る俺の気持ちにもなってくれよ。おまえのせいで動けねえから、朝から身体バッキバキなんだぞ。」
ぎゅっ。くいくい。むぅ。
「ふふっ、…まあいいか。お前のおかげで、俺も冬の湯たんぽには事欠かないからな。」
(冬は一緒に)
俺が小学校低学年くらいの時の話。
それまで俺は、文字通り起きている間は一瞬たりともじっとしていないタイプで、真冬に半袖短パンで外に出ても風邪引かないような奴だった。当然、学校を休んだこともなかった。
その日、俺はめったに出さない熱を出して寝込んでいた。
母親が言うには、俺が高熱にも関わらず学校に行こうとするので、引き留めるのに苦労したらしい。が、残念ながら俺は全く記憶に無い。ただ、朦朧とした意識の中で、ずっと鉄のような臭いと味がして不快だったことを覚えている。
午後になり、血の臭いが和らいでいくと、嘘のように身体が軽くなった。熱も下がったので、俺は早速遊びに行こうと思ったが、母にバレて〆られたので、居間で大人しくテレビを見ていた。何を見ていたかは忘れたが、突然、番組がニュースに切り替わった。手持ち無沙汰にしては、そこそこ面白く見ていたのだろう。俺はテレビに向かって文句を吐いた。
テレビ画面には、見慣れたはずの景色が映し出されていた。至るところに赤いペンキのようなものが塗りたくられ、異様にものものしい雰囲気であることを除けば、間違いなく俺の通う小学校だった。
その日、刃物を持った男が小学校に侵入し、校内にいた児童や教職員を次々と切りつけていったのだという。俺のクラスでも多くの死傷者が出た。
もし学校を休んでいなければ、俺も無傷ではいられなかったかもしれない。
その日以来、周囲は事件の話をわざわざ持ち出してきては、とかく運が良かったと言ってくるようになった。俺は……俺の気持ちは。
時がたち、俺は結婚した。その人は、俺のことを運が良かった、とは絶対言わなかったから。
(風邪/とりとめもない話)
わざわざ待ちわびるほどじゃないけど、降るとなんかちょっと嬉しい。
(雪を待つ)
長い間、私の子ではないと知りつつ、娘に愛を注いできた。
娘がいなくなったとき、私の心は穏やかなままだった。何の感情も湧かなかった。
ただ、動転して狂ったように泣く妻の様子を見て、滑稽だと思った。
(愛を注いで)