〈アロマ・キャンドル〉
キャンドルに火をつければ、どんな夢でも思いのまま。
キャンドルの火が消えるまで、見たい夢が見られます。
夜の妖精たちが心を込めて、ひとつひとつ手作りしているよ。
さあ、扉をあけて。
お代は、ほんのお気持ち程度。君の大事なものを、少しだけ。
夜の妖精1「ああ、これね。蝋に植物を混ぜてるんです。え?◯麻?いやいや、そんな危ないもんじゃないですよ(笑)ええ、法律で規制されてないヤツです。あ、でも、大◯よりずっとイイんですよ、本当に見たい夢見れる感じで。あくまでも感じ、なんですけどね(笑)ええ。いや、それはちょっと。何か教えちゃったら、ちょっとややこしいことになっちゃうんで(笑)う~ん、まあ言えるのは、違法にならないのをいくつか掛け合わせてる、ってことですね。いや、そこは(笑)秘密です。」
夜の妖精2「お客さんは大半が女性です。若い女性。基本、若い女性にしか売らないですね。いや、お金じゃないんですよ、お取引の条件。え?いやいや、察してくださいよ(笑)ま、あれです、中にベッドがあるんで、そこでしばらく過ごしてもらいます。ええ。そこでもアロマ焚いてるんで、お客さんの苦痛も全然ないはずですよ?気持ち良くなってる間に全部終わるんで(笑)で、その間にぼくたちも気持ち良くなれるっていう(笑)ある意味Win-Winですね。まあ、こっそり撮影はさせてもらいますけど。お取引の記録のためと、あとはまあ、ね(笑)たま~に、男性のお客さんにも売ります。いい女の子、見つけて連れてきてくれればですね。そこんとこは結構厳しいですよ(笑)」
(キャンドル)
「また会いましょう」
人は、人であるというだけで、必ずひとつは嘘をつくように定められている。
この嘘のつけない真の正直者は、数多の嘘つきたちから社会不適合者の烙印を押される。
私?私は嘘つきで結構w
たとえ腐った世界でも、私は生きたい。
(また会いましょう)
「もしもし?うん、なに、どしたの?(笑)……え?うん、今仕事終ったとこだから、…お開きになったら連絡ちょうだい、迎えにいくわ…うん、いや、良いよ別にそんなこと気にしなくて、久しぶりなんでしょ?…うん…うん…もうちょっと楽しんできなよ、次またいつ会えるかもわかんないんだからさ。…うん、…え、私!?私はいいよ(笑)…うん、よろしく言っといて……はいはい、じゃあ、また後で。」
恋人との通話を切る。地下鉄のホームで電車を待つ。
ドンッ
地下の深淵は、つんざくような悲鳴にも似た車輪の音に包まれる。
その時、脳裏に浮かんだのは、あなたの
(脳裏)
ある事柄に対して、それが意味のあることなのか、それとも無意味なことなのか、そんなことを考えている瞬間が、一番意味がないことなのかもしれない。
(意味がないこと)
バタンッ
A:本っ当むかつく!信じらんない!
B:ちょっと、帰ってきたらただいまくらい言いなさいよ。
A:…あんた、それじゃあもうお母さんじゃない。色気も何もあったもんじゃないわ(笑)
B:うるさいわね、あんたも似たようなもんでしょ。そんなことより、今ちょうどご飯出来たところだから、早く手ぇ洗って着替えて来なよ。話は食べながらゆっくり聞くわ。
A:わかった、40秒で支度する!
食卓にて
B:んで?さっきは何をそんなに怒ってたわけ?
A:そうそうそれよ!あいつら私が彼氏いないことをいいことに、「愛言葉って、知ってますぅ~?」とか聞いてくんの!しかも業務中よ!こっちは仕事できないあんたらと違って忙しいの!!喋ってる暇があるならちょっとは手ぇ動かせって話よまったく!
B:あー…とりあえず、あんたは一ミリも悪くないことが判明した。
A:でしょ!?
B:うん。それであの、あい、言葉って何?合言葉じゃないの?
A:違う違う。こうやって書くの、「愛言葉」。
B:へー、なんか……ううん、続けて?
A:愛言葉は、恋人同士とかで、お互いの愛を確認し合うために決める合言葉なんだけど、なんか、こういうことするカップルって絶対上手くいかないと思わない?わざわざ言葉で確認しなくても、本気で信頼してる相手だったら問題ないでしょ。
B:まあね(笑)でももし、私が愛言葉決めたいって言ったら、あんたはやってくれるでしょ?
A:え?うん、そりゃあ、あんたがそれで幸せならね。でも、こういうのあんた絶対すぐ飽きるじゃない。三日ももたないでしょ。
B:うん(笑)私から言い出しといてなんだけど、多分明日には忘れてる(笑)
A:だいたいさ、そんなもんで縛り付けてまで愛を確認したいってことはさ、相手のこと全く信用してないってことでしょ?信用できなくて不安だから、言質を取って安心したいっていうか。
B:だろうね。でも、GPSとかもそうなんだろうけど、それされた方としてはさ、愛が重く感じるのはもちろんだけど、相手から全く信用されてないって言われるようなもんじゃん?そりゃ百年の恋も醒めるわ。
A:うちではお互いに全部喋ってるもんね、今日の出来事。
B:そうだね、それがGPS代わりか(笑)
A:あいつらも私たちみたいにすれば良いのに(笑)そしたらもっと幸せになれるかもしれないのにね。
B:…あんたってさ、本っ当、いい人だよね。
A:えー(笑)ありがと?
B:あのさ、
A:しってる。
B:え?
A:それをあんたから言いたいのもしってる。
B:……
A:待ってるから。あんたが準備できるまで、いくらでも待てるから、私。それまでは、このままでいよう?
B:…うん。ありがとう。あと少しだけ、待っててほしい。
A:うん!
B:あのー、同僚さんたちには私は"彼氏"ってことで話してもらっても……
A:誰がそんなことするかぁ!!ボケェ!私があんたとのこと誰にも話してないのは、あんたを一人占めしたいからなの!それ以外に理由なんてないんだから。それに、、いまさらでしょ?(笑)
B:(笑)それもそうだね!
後日、海外に生活の拠点を移した二人が決めた愛言葉は、日本語で「ただいま」「おかえり」だということです。
(愛言葉)