始まりはいつも、絶望から。
(始まりはいつも)
カーテンコール、満員の観客を前に、いつも気丈に振る舞っていた君の涙を初めて見た。
そうだよね。君の友人が練習への無断欠席を繰り返したせいで、本当はその友人がやるはずだった役はただのOGである私に頼まざるを得なくなって。私がその役をやることになっても、君は最後まで、この役は彼女にやってほしかった、と言っていたね。
頼りにならない先輩たちと、なにも知らない後輩たちを一人で引っ張っていかなきゃって思い込んで。誰にも頼らず孤独に頑張ってきたんだよね。辛かったね。よく、頑張ったね。
でもね。
本当は、私の前でだけ泣いてほしかった。私が君の異変に気づいて、声をかけたその日に。その日君は頑なに、笑顔で、大丈夫です、としか言わなかったけれど。その笑顔の裏に、人知れず抱えた苦悩があったことを、私は知っていたよ。きっと、私の聞き出し方が良くなかったのかな。あの時、もっと上手に話せたら、君は本心を打ち明けてくれたのかな。
私は、すでに泣きすがるべき胸を持っている君を見ながら、そんなことを思っていた。
一度だけ、年下の男の子からの好意を利用して、遠回しに君に気持ちを伝えたことがある。
その時、君は笑いながらこう言ったね。
「男性の◯◯先輩より、女の私が選ばれたってことですかwww◯◯先輩、完全に脈なしじゃないですかwww」
(涙の理由)
煮え切らない態度にしびれをきらして、力を込めて、あの人の背中を押す。
あの人の身体はゆっくりと地下の深淵に消えていった。
辺りには、人の悲鳴のような音が響き渡っていた。
(力を込めて)
そういえば昔、
「私は星の一つ一つについては研究し尽くしたが、それらの集合体である星座については全くの無知である。研究職を辞してからは、星座について学びたい。」
みたいなことを言った学者がいたな。
新卒で入った会社を辞めた日、帰りの電車の中でふと思った。
(星座)
─他人の掌の上で踊らされるくらいなら、死んだ方がマシだ─
昔そんなことを言っていたはずの彼は、再会した私に気づかずこう言った。
─踊りませんか?─
今宵一夜、すべての憂鬱を忘れるために。
(踊りませんか?)