ひので
あたらしい はじまりのひかり
いつもの ひかり
きっとあのひともみたかった
いつもの ひかり
てのひらにあたる ひかり
ぬくもり
いつも なくなってから きがつくの
たいせつな ひかり
まっ逆さまに落ちていく
大好きだったおうちの玩具
ちいさく鳴いた可愛いわんこ
あなたのスベスベのおてて
風の気持ちいい帰り道
肌に触れる温もり
全部 これだけだったらよかったのに
これだけしかいらなかったのに
全部 まっ逆さまに落ちて 割れた
噎せかえりそうな甘いバニラの匂い
「香水臭い女は嫌いだ」
「違うでしょ?」
「は?何が違うんだよ」
「香水じゃなくて私の事が嫌いなのよ」
「…本当に面倒な女だな」
そうやってすぐ逃げようとする
どうしてこんな男すきになったのかしら
「兎に角、もう別れてくれ」
「あら あの娘の所に行くの?」
「……何処までも執念深い女だな もう行く」
彼の背中に香水をかける
「おい!!なにしやがる!…」
私が手に持った香水を見た途端彼の顔色が変わる
「それは…」
「あの娘が持ってたのよ、貴方があげたんでしょ」
「お前………」
「そっちには居ないわ」
「居るのは此方」
クローゼットの方を指差す
「貴方も入れてあげる
2人の時間を邪魔しないわ」
ーーー
ーー
噎せかえりそうな鉄の匂い
鼻つまみながらクローゼットに
香水をひとふり
「ほんと」
「貴女って悪趣味」
「そっちもおきた?おはよ!」
同時に座る
同時に手を振る
「っふふ」
同時に笑う
「わたしたち いつも いきぴったり」
鏡と向かい合わせになった少女
無垢な瞳を輝かせ鏡に手を伸ばす
「きょうは どんな ごはんかな 」
狭い部屋にただ1つ置かれた鏡
中の自分と話す少女
□□□
「今日もなんて可愛いんだろう」
薄暗い部屋に並ぶモニター
「今日は 娘に何をつくろうかしら 」
「この子の好きなもの 聞いとけば良かったわ」
モニターと向かい合わせの女は笑う
「いえ…」
「私の好きなものを好きにさせたらいいのよね」
最高の天気だ
空は晴れ渡り
心地のよい風も吹いている
鞄を持ち直し肩を回す
「ふ~」
胸いっぱいに息を吸い込み
海の香りを閉じ込める
「まあでも、少~し暑いかな」
笑いながら君の手を取る
「ああ でも 水は君の手より冷たいな」
海の中へ歩みを進める
「ほら…」
取った君の手をソッと離す
ゆっくりとした動きで沖まで流れていく君
「すぐ追いかけるからね」
君の 全て を 順番に 放し て いく
「じゃあ還ろうか」
頬に手を当て 視線を合わせ君に問いかける
「海へ」