クリスマスの過ごし方を考える間もなくあっさりとクリスマスがやってきた。仕事の残業が終わらない、どのみち予定がないのでささやかな残業代と評価を稼げればいいと引き受けたが思ったより手間がかかっている。同じく残業を引き受けた人とともにひたすら働く。終わって帰るときに、メリークリスマスと同僚がお疲れ様ですの声とともに冗談めかして笑って言いながら去っていった。つられるようにこちらも返事を返してささやかなクリスマスっぽさを感じながら足早に家路を目指す。
イブの夜にもかかわらずこれといってらしいことがないというのも寂しいと思いケーキを一つ買ってみた。正直普段のケーキに小さな飾りを乗せただけではないかと思うぐらいにはクリスマス感がないがそのぐらいのほうが気取らなくていいと自分を慰めてみる。せっかくだからと来客用の少し装飾が入った皿とカップを出して紅茶を入れる。テレビをつけてみたが余りクリスマス感のない番組ばかり目についた。はたから見れば寂しい様だろうと思いながらもその見るものすらもない中、案外に軽い口当たりのクリームに少し物足りなさを感じながら、クリスマスを味わう。
自分へのプレゼントに何かを買おうと店先を見て回る。これといってほしいものが見当たらないのは欲が枯れているのか現状満足しているのかどちらにせよなければないで節約にはなる。とはいえどうにもなんだか虚しさもあり、もう少しと店を見て回る。クリスマスシーズンらしく赤と緑の装飾がされている明るい店が目につく。欲しいものがないかと欲しいものを探して回る、単にストレス発散にお金を使いたいだけかと思い、ずいぶんと時間を無駄にしていることに気づく。今年ももうすぐ終わるのかと寂しさより諦めのような思いを感じて、帰って休もうかとさっさと家路を目指して店を出た。
冷え切った空気の中で水仕事を終えたあとハンドクリームを手のひらに出してそっと伸ばす、ゆずの香りがふわりと浮かぶ。手を擦り合わせるように、ゆっくりと撫でる。疲れ切った手と心が落ち着いていく。かじかんだ指先を温めるようにそっと口元に手をやる息をかけるとゆずの香りが鼻に届く。
寂しさが自分の中から湧き上がる。胸が重く、生きるのが苦しいと不安の夜に溢れるように涙とともに落ちていく。暗い気分がどこまでも自分を追い回す、どこまでも自分でしかないどこまでも終わったことでしかない。過去を振り向いて今足掻いている。今から目をそらして頭の中の過去がもがいている。いつかの寂しさを恐れて未来から目を背ける。