『未来からの警告』
「おーい、手紙が届いてたよー」
「…私に?」
はい、と手渡された封筒は真っ白で差出人も何も書かれていない。唯一書かれているのは、私の名前だけ。
彼女はその封筒を見て、眉をひそめた。
「…もしかして、危ない感じ?捨てとこうか?」
「ううん、大丈夫。とりあえず見てみるよ」
念の為、カッターで封を開ける。慎重に中の手紙を取り出し、内容を読んだ。
「……ど?大丈夫っぽい?」
「…うん、何の変哲もない手紙だったよ。」
それを伝えると彼女は安心したように大きく息を吐いた。
「良かったー!ね、どんな手紙!?」
「未来の私から届いた手紙…なんてね」
「えーなにそれー!」
カランカランと音を立てて扉が開いた。どうやら彼らが来たようだ。こんにちはーと明るい声が聞こえた。
「お!来たねー!」
彼女がパタパタと駆け寄り、彼らを迎える。
私は手元にある手紙をもう一度見た。彼女に嘘はついていない。これは確かに未来の私からの手紙だ。……だが、未来で何かがあったようだ。未来の私からの警告。最悪な未来を変えろということか……。
笑顔で話す彼女を見て、私は決意を固くした。
"命にかえても彼女を守れ"
【10年後の私から届いた手紙】
『バレンタインはドーナツ』
「はい、これ」
彼の前に袋を差し出す。彼は顔を輝かせてその袋を受け取ってくれた。
「俺に!?ありがとう!!何入ってるの?」
「ドーナツだよ。手作りしてみたの」
「わぁ!手作り!?凄い!ありがとう!!」
彼の純粋無垢な笑顔に、私もニコリと笑い返す。
良かった、受け取ってくれた…。今日のミッションは成功だ…。
あ、そういえば!と彼が声を上げる。
「今日はよくお客さんからチョコを貰うんだけど、どうしてわかる?」
あぁ、そうだ。彼は人間界には来たばかりなので、バレンタインという文化を知らないのか。
私はバレンタインとか何かということを説明する。…少し嘘を交えたけど。
「そっか!普段お世話になってる人に感謝を伝えるためにチョコを贈り合う日!とっても面白そう!」
説明を聞いた彼の目が輝いた。お菓子好きの彼からしたらこの日は天国だろう。
「別にチョコに限らなくてもいいんだよ。クッキーとかカップケーキとか」
「へー!そうなんだ!俺も今から贈りもの探してくる!」
教えてくれてありがとうー!と元気に走り去っていく彼に手を振った。
彼はあの子に渡すんだろうな…。とっても可愛くて、とっても優しいあの子に。
はぁ、と少し息を吐く。
私じゃあの子に叶わない。…それでも、貴方を想うことだけは許して。
「…さてと、私も自分チョコ買っていこうかなぁ」
少し軽くなった鞄を抱え直し、私はお気に入りのお菓子屋に歩き出した。
ドーナツ=大好き
【バレンタイン】
【待ってて】
【伝えたい】
『今世紀最大のプロポーズ』
「懐かしいね、この場所」
「あぁ…」
3月半ば。最近雨続きだったが、やっと晴れてくれた。暖かい風が吹き、花もそよそよと揺れていた。
私たちが結ばれたこの場所。しばらく来ていなかったが、2人の休みが合ったので久しぶりに来てみた。この場所は昔と変わらず、綺麗なままだった。
「昔ここで告白してくれたよね。あの時、貴方の眼鏡がずり落ちたの面白かったなー」
「え!?まだ覚えてたの!?…ほんとにもう忘れて…」
ガックリと肩を落とす彼。
彼の告白をOKした時に、驚きすぎて彼の眼鏡が落ちたのだ。しっかりカシャンと音を立てて、地面に落ちた。慌てて拾う彼も含め面白かったのだ。
それを思い出しクスクスと笑っていると、彼に名前を呼ばれた。彼の顔を見ると、今までにないほど真剣な目をしていた。場所も相まって告白のことを思い出し、胸がドキッと高なった。
「俺は、あんたと会えてから毎日が幸せだった。付き合う前も、付き合った後も。こんなに幸せでいいのかって怖くなるぐらい。…でも、同時にあんたを幸せに出来てるか不安だった。俺は趣味に集中しちゃうタイプだし、あんまり素直に気持ちを伝えられるタイプでもない。…彼氏としてはあんまり良い男じゃないかもしれない。」
そこで一旦区切り、大きく息を吸う。
「でも、今更あんたを離してやれない」
私の前にすっと跪いた彼はポケットから小さな箱を出した。そして、蓋を開く。
「愛してる。俺と、結構してください」
中に入っていたのは、指輪だった。
私の目からはポロポロと涙がこぼれる。彼はふっと笑って私の涙を拭ってくれた。
「いきなり言うなんてずるいよ〜…!心の準備してなかった!」
「ははっ、悪い悪い。この場所でプロポーズするって決めてたんだ。そしたら、急にこの場所に行くって言うから。……それで、返事は?」
返事なんて分かりきってる癖に聞くなんて意地悪だ。
勢いよく抱きついて、思いっきり叫ぶ。
「喜んで!!」
あの時の様に鐘の音が聞こえた。
【この場所で】