香水を初めてつけてみる。
ふわっと広がるラベンダー。
あなたがいつもつけていた、私にとって初恋の匂い。
これで、これからもあなたのことを忘れないという証明ができますか?
私はいつまでもお花畑にとどまっている。
ドラマも映画も綺麗な人が、カッコイイ人が。
場を盛り上がらせるために「好き」とか「愛してる」とか言ってるけど、そんな言葉はいらないんだ。
言葉はいらない。
ただ、ここにいて欲しかった。
――なのに、ずるいじゃないか。
「隣にいてくれてありがとう」だなんて。
何で僕より早く眠っちゃうんだ。
「やっほー。新しく出来たパン屋で沢山買ってきたんだ。作りたてが美味しいじゃん? そのまま来ちゃった」
「え、あ、うん。と、とりあえず、入って、いいよ……」
「お邪魔しまーす」
本当に焼きたてのようで、袋からは油が染み出ている。
でも、今はそれ以上に僕が熱い。
ある日、雨宿りしている君を見かけた。
私の事、気づいてないみたい。一緒に帰りたいけど、きっと「風邪引くよ、送ってくから走ろう!」って言うんだろうな……。それじゃ、せっかく会えたのにすぐ別れちゃう。
「うーん……。あ、そうだ。郷に入っては郷に従え。なら、私もびしょびしょになればいい」
傘はカバンにしまって……よし。
「おーい! 衣舞紀君も傘忘れたの?」
びしょ濡れのSSR衣舞紀君を見れるとは……。
これは、私が雨でびしょ濡れという名の課金をしてもいい……。
ずっと書き続けてきた日記帳。
小さいの頃の文を見返すと昔の頃へタイムスリップした気分になる。
家族で旅行に行った時のこと。
学校の校外学習や修学旅行のこと。
修学旅行というと、女子はやっぱり恋バナのイメージがある。でも、意外と男子だって恋バナで盛り上がる。
かわいい子とか、気になる子とかの話してたっけ。
でも、僕は好きな子がみんなにバレてるから「お前は聞かんくてもわかる」「星乃さんでしょ?」って言われて、困ったな……。
だってそうなんだもん。
僕が「わかりやすい」だけらしいけど、それはきっとお母さん譲り。
でも、その「星乃さん」が隣で寝ている。
ゲームで寝落ちしたところをベッドまで運んだのだ。
小学生の頃と変わらず、誰よりもマイペース。
野良猫という比喩が怖いほど良く似合う。
「今日もおやすみ。夜空ちゃん」
そんな子の横で今日も僕は眠った。