僕はピーマンが嫌いだ
あの形、見た目、苦い味
みんなみんな嫌いだ
ある日我が家の食卓にピーマンが並んだ
ピーマンの肉詰めと姿を変えて堂々と白飯の横に並んでいるが
僕の目は誤魔化せない
ピーマンはピーマンだ
母が言う
“騙されたと思って食べてみて”
おっと、わざわざ言ってくるとは驚いたなあ
三日月のように目を細めてニタニタ笑う母はまるで小悪魔
良かろう、騙されてあげよう
そのニタニタ笑う気持ち悪い顔を
驚きと悲しみの顔に変えてやろう
パクっ “?!!!”
う、う、うめぇ
天気予報をお伝えします
今日はついにきみとの初デートでワクワクしていますので、朝6時頃は良い天気となるでしょう。
午前9時頃には、集合時間を過ぎてもやってこないきみを心配してドキドキするため、不安定なお天気となりそうです。傘のご準備をお忘れなく。
正午頃にはきみと向かい合っての食事をします。お手洗いに行った際自分のメイクの崩れ具合に悶絶。大粒の雨がふりそうですが、きみの頬にナポリタンのソースがついているのを見て、安心し、さらに自分にとって好印象となるため、晴れてくる予想です。
15時になると、きみとの初デートも終盤となり、寂しい気持ちと楽しかったという気持ちで、曇り空となるでしょう。しかし、
“次はあそこに行きたいね”という一言に次があることを確信。空は一気に快晴となるでしょう。
玄関のドアを開けると、
いつものようにきみは笑顔で出迎えてくれる。
その笑顔は疲れきった心を包み込むように癒してくれる。
“おかえり!今日はどうだった?
疲れてそうだね。ゆっくりして!”
ありがとう、今日も可愛いなあ。
私にとって心の支えであり
人生において特別な存在のきみ
“それでなんだけどさあ、
アレをもらえませんかね?”
はいはい、アレね
今日もお留守番ありがとう。
はい、エサだよ、ポチ
“ワン!”
今日もりん(仏壇にある鐘)の音が
和室に響き渡る
仏壇には小さな赤い花が銀色の
花瓶に供えてある
私は手を合わせ、
今日の報告をする
今日は授業で指されたよ
難しい問題だったから緊張した~
今日はどうだった?楽しかった?
目を開け、帰りに買った豆大福を
花瓶の前に供える
きみの大好物の豆大福、しばらくしたら私が食べるのだけど
私のあの日からの日課である
目の前で笑顔を浮かべるきみは
もう二度と笑い声を聞かせてくれない
私の中の最期のきみは
病室のベットで辛さに歪む顔を
必死に笑顔にしようとしたきみ
あんなことで死んじゃうなんて
バカみたい
幸せにするって誓ってくれたのに
しょうもない嘘をつくなんて
バカみたい
私はもう恋できない、しない
あなたが私の唯一の友であり相棒
大好きだよ
こんなことを一人呟く私、
バカみたい
私はクラスにいても、家にいても一人だ。
周りからは孤独な少女にしか見えないかもしれない。
でも私はひとりぼっちじゃない。
いつも隣で笑っている、
支えてくれる相棒がいる。
笑えば良い、からかえばいい。
誰にも見えなければ、
誰にも知られていない。
世界一幸せな世界。
私とこいつの二人ぼっちの世界。