『たそがれ』
たそがれ時は気に入っている
特にこれからの季節のひんやりと
透き通った空気感の
たそがれ時がいい
もう随分前、このたそがれ時に
昔の彼と再会したことがあった
会話の内容も彼の顔も殆んど
覚えていない
ただ、ひんやりとした心地よい
たそがれ時の街を二人でずっと歩き続けた
その空気感と自分が着ていた
ワンピースの色だけは鮮やかに
甦る
家路に急ぐたそがれ時に
ふと思い出す私のたそがれの
記憶
今は、もう、自分自身がたそがれ
てきたように感じてしまう
それは、少し苦味のある
人生のたそがれということね
『きっと明日も』
きっと明日は---と思う日々
きっと明日も----と思える日は
よい意味では少ないよ
そうだ、このところよく晴れて
心地よい日々が続く
きっと明日もと思うね、うふふ
それ以外?きっと明日は、
いいことが待ってるよと
ただ祈る日々
きっと明日もこの苦しみは
続くだろうと思う日々
言葉の微妙さがなんだか好き
『は』と『も』で違うのよね
大きく意味合いが
素敵に使い分けて、素敵な言葉を発したいという思いは、私の中で
一番の『きっと明日も』かな
昨晩、2年ぶりに友人と会った
美味しいお料理とお酒で会話も
弾んだ
こんなひとときは、『きっと明日も』あったらいいなと思うね
私にも、『きっと明日も』が
増えて行くね
ほんと、今日もいい天気だ
『きっと明日も』いい天気
『静寂に包まれた部屋』
寒い冬の日、静寂に包まれたへやで、亡くなった人に対面した
穏やかな顔だったと記憶する
ご家族は涙を堪えて、慰問客に
対応していた
そこへ、息子夫婦が現れた
60代半ば位に見えた
静寂の空気感の中に異様な空気が流れるのを感じた
それは私だけだったのだろうか
息子の嫁にあたる女性は、
真っ赤な口紅をさして
現れた,-----
そして、手にしたコートは
赤のタータンチェックであった
何かに抵抗しているように見えた
亡くなった義父に対して?
それとも、この家人達?
お悔やみの言葉も一言も発する
ことなく、自分だけ帰って行った
静寂は続いたが、それからの
部屋の中は違和感のような
香りが残ってしまった
化粧は薄く、身につけるものは
通夜の席ではないにしろ、黒に
近いものが亡くなった人への
気配りのように思っていた
葬儀の打ち合わせに来ていた
葬儀社の男性の驚いた顔が
目に浮かぶ
60代らしき女性は、なぜか
とても美しい凛とした佇まい
であった
音のない静寂への抵抗は
以外にも効果的であった
不思議な思い出になった
『別れ際に』
別れ際の言葉が今も
心に突き刺さったまま
『通り雨』
通り雨、雨宿り、夏の日の
光景
通り雨のような出来事が、
大雨になってしまった
私の人生
大雨になってから気づいた
あれ以来、ずっと大雨に
うたれている気がする
通り雨をやり過ごす、自分で
あったらよかったのにね