『静寂に包まれた部屋』
寒い冬の日、静寂に包まれたへやで、亡くなった人に対面した
穏やかな顔だったと記憶する
ご家族は涙を堪えて、慰問客に
対応していた
そこへ、息子夫婦が現れた
60代半ば位に見えた
静寂の空気感の中に異様な空気が流れるのを感じた
それは私だけだったのだろうか
息子の嫁にあたる女性は、
真っ赤な口紅をさして
現れた,-----
そして、手にしたコートは
赤のタータンチェックであった
何かに抵抗しているように見えた
亡くなった義父に対して?
それとも、この家人達?
お悔やみの言葉も一言も発する
ことなく、自分だけ帰って行った
静寂は続いたが、それからの
部屋の中は違和感のような
香りが残ってしまった
化粧は薄く、身につけるものは
通夜の席ではないにしろ、黒に
近いものが亡くなった人への
気配りのように思っていた
葬儀の打ち合わせに来ていた
葬儀社の男性の驚いた顔が
目に浮かぶ
60代らしき女性は、なぜか
とても美しい凛とした佇まい
であった
音のない静寂への抵抗は
以外にも効果的であった
不思議な思い出になった
9/29/2022, 11:02:21 AM