語り部シルヴァ

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2/12/2026, 11:02:02 AM

『伝えたい』

オーブンが間抜けな音を出して止まる。
恐る恐る開けるとケーキの形をした
真っ黒な塊がプスプス音を立てながら出てきた。

見事に火加減を間違えてしまった。
予熱を入れすぎたか...
呼びにもう一個分残しといて良かった。

予熱の温度をしっかり確認してオーブンに入れる。
渡すのは明後日なのに練習だけでもすごく緊張する...
せっかくのイベントなんだ。どうしても伝えなきゃ。

オーブンは頑張って動いている。
さっき間抜けな音を出していたのに
懸命に動くオーブンを見て
頑張れと心で念じた。

語り部シルヴァ

2/11/2026, 12:01:35 PM

『この場所で』

家具や荷物が片付けられ、本来の広さに戻る。
ここで沢山の思い出が作られた。
ご飯食べすぎて気分が悪くなったり、
恋人と一緒に昼寝したり、
やけ酒しようとしたらご飯を床にぶちまけたり...

なんだかんだ酷い思い出も今は
あぁそんなことあったなあと済ませれる。
「荷物は以上でよろしいでしょうか?」
「あぁ、はい。よろしくお願いします。」
かしこまりました!では運びます!
と爽やかな笑顔を残し引っ越し屋さんは
僕の荷物を載せて走り出す。

「じゃ、お世話になりました。」
空っぽになった部屋に一礼して
引越しトラックを追いかける。

語り部シルヴァ

2/10/2026, 10:48:38 AM

『誰もがみんな』

私が歩けばみんな見てくる。
指をさしてくる人だっている。
みんな私の話をしてる。
私が見ればみんな目を伏せる。

はぁとため息が出る。
教室で自分の机にはいつも通り
黒のマジックでメッセージが書かれている。

"死ね" "ペテン師の子供" "顔見せんな"
ありきたりな言葉が綴られている。

言いたいことなら言えばいいのに。
みんな手を差し伸べない。
私の元に来るのは罵詈雑言たち。

...今日はもう帰ろうかな。
ここで学べることはもう無いらしい。

語り部シルヴァ

2/9/2026, 10:49:53 AM

『花束』

「ふふ、あなたったらまた花を...」
照れくさそうに笑う君はそう言いながらも
花束を受け取ってくれる。
ここ最近嫁の体調が良くない。
入院という形でなんとか現状維持できているレベルだ。
私が不安なら、当の本人はもっと不安だろう...
だから会いに行ける日は毎回花束を買って嫁にあげている。

病院に怒られない限りは続けるつもりだ。
「これじゃ、お花屋さんを開けますね。」
そう言って今日受け取った花を我が子のように撫でる。

そんな優しい君だからこそ早く良くなって欲しい。
今はそう願うばかりだ。

「実は...あなたにこれをあげたくて。」
そう言って折り紙で色んな種類の花を束にして渡された。

どれも優しく丁寧に折られている。
そんな健気な姿勢に思わず涙が零れてしまった。

語り部シルヴァ

2/8/2026, 10:10:15 AM

『スマイル』

寝起きに鏡を見る。
まぁー...なんて情けない顔なんだろう。
顔を洗って歯を磨いて少し目を覚ます。
気分がさっぱりして朝の身支度を済ませる。

ご飯を食べて、歯を磨いて...
忘れ物が無いかチェック。
よし、大丈夫そうだ。

あと数分で出勤だ。
部屋を出る前にもう一度鏡を見る。
朝よりかはマシな顔だが、これは社会人の顔じゃない。

軽く深呼吸してして心の中で唱える。
"さあ、仕事の時間だ"
自然と口角がキュッと上がる。

これで大丈夫。じゃ、行ってきます。

語り部シルヴァ

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