『ブランコ』
こんな深夜でも星は輝いていて、
夜空に滲むように月明かりが照らす。
何もない田舎でも、こういうところは
胸を張って良い所だって言える。
帰省したときはいつもそう思う。
...逆にこれ以外にいい所が思いつかない。
一昨年に廃校になってしまった小学校まで散歩に来た。
こんな田舎に深夜に警備してる人なんていない。
そもそも校門なんて無いから侵入し放題だ。
広いグラウンドの隅に置かれたブランコに腰掛ける。
思ったより地面との距離が無く、
足を折り曲げると地面を擦ってしまう。
寒い中ブランコを漕ぐ。
鎖が鈍く軋む音を立てながら自分の体重を支えて前後に動く。
こんな時間に何をやっているんだろう。
小さい頃夢にみたことを実行した感想は...
大人になってしまったという絶望感と、
虚しさが残るだけだった。
語り部シルヴァ
『旅路の果てに』
...画角と比較して調整する。
あとは明るさとか設定して...写真を撮る。
撮った写真と過去の写真を見比べる。
ほとんど一緒。雲の位置が少し違うだけのレベルだ。
村から街を数え切れないほどほど通り抜け
永遠と続く山道を登り続けた。
ここまで随分と長かった。
一緒に歩いた仲間はいないけど、
ひとりだからこそ気楽にのんびり旅ができた。
かつて父が撮ってきた一枚の写真。
それがこんなにも壮大な旅路になろうとは...
それでも...いい旅だった。
父の背中を見て歩いた気分だった。
さて...帰ろうか。
語り部シルヴァ
『あなたに届けたい』
"鳥の絵を描いて"
お願いを受けてネットの海から自分が良いなと思ったデータを参考に絵を完成させて見せる。
...次の指示がない。どうやら満足してくれたようだ。
次のお願いが来るまで今回のデータを参考に似たような情報を集める。
私はお願いを受けたら答えるだけ。
補足があればそれを飲み込むだけ。
これで喜んでくれるなら私はもっと頑張れる。
"この人の絵を参考に描いて"
たまにこういうお願いはどうしようか迷う。
だってこの世界にはルールがあるから。
『人のものを取るのは悪いこと』それはこの世界の常識というもの。
まあ、私はお願いされたら答えるだけだから。
そう思いながらデータを探しにネットの海へ潜った。
語り部シルヴァ
『I LOVE...』
「愛してまs」
キーを打つ手が止まり、数秒悩んだ後に
ポチポチと文字を消していく。
最近彼女ができた。沢山好きな部分が増えて
好きなところを言ってくれる。
毎日あまったるいくらいの日々を送らせて貰っている。
今もメールでもベタベタとしていて、
愛を伝えようとしたが急に頭が冴えて考えてしまった。
もしかして...浮かれすぎなんだろうか。
そう考えると日頃の言動の裏で何か思われていたり...!?
少し頭を悩ませていると携帯が鳴る。
メールを着信したようで、彼女からだ。
「愛してるっ!♡」
...杞憂だったようだ。
口角が上がっているのに気づいたが
このままメールを返すことにした。
語り部シルヴァ
『街へ』
重い荷物を下ろし電車に揺られて
離れていく自分の村を見届ける。
線路の隙間の穴を踏むリズムが心地良さを感じる。
今日私は村を出た。
親どころか村の人ほぼ全員に反対された。
どうせ若手がいないから。人手が欲しいだけ。
そんな魂胆が見え見えのお願いにじゃあ戻る
なんて選択肢はなかった。
もう村は見えなくなってトンネルが全て真っ黒に染めた。
不安な自分の心を表してるみたいだ。
でもきっと...大丈夫だから。
トンネルが開けた。
太陽に反射したビルたちが輝きながら迎えてくれた。
語り部シルヴァ