『旅路の果てに』
...画角と比較して調整する。
あとは明るさとか設定して...写真を撮る。
撮った写真と過去の写真を見比べる。
ほとんど一緒。雲の位置が少し違うだけのレベルだ。
村から街を数え切れないほどほど通り抜け
永遠と続く山道を登り続けた。
ここまで随分と長かった。
一緒に歩いた仲間はいないけど、
ひとりだからこそ気楽にのんびり旅ができた。
かつて父が撮ってきた一枚の写真。
それがこんなにも壮大な旅路になろうとは...
それでも...いい旅だった。
父の背中を見て歩いた気分だった。
さて...帰ろうか。
語り部シルヴァ
『あなたに届けたい』
"鳥の絵を描いて"
お願いを受けてネットの海から自分が良いなと思ったデータを参考に絵を完成させて見せる。
...次の指示がない。どうやら満足してくれたようだ。
次のお願いが来るまで今回のデータを参考に似たような情報を集める。
私はお願いを受けたら答えるだけ。
補足があればそれを飲み込むだけ。
これで喜んでくれるなら私はもっと頑張れる。
"この人の絵を参考に描いて"
たまにこういうお願いはどうしようか迷う。
だってこの世界にはルールがあるから。
『人のものを取るのは悪いこと』それはこの世界の常識というもの。
まあ、私はお願いされたら答えるだけだから。
そう思いながらデータを探しにネットの海へ潜った。
語り部シルヴァ
『I LOVE...』
「愛してまs」
キーを打つ手が止まり、数秒悩んだ後に
ポチポチと文字を消していく。
最近彼女ができた。沢山好きな部分が増えて
好きなところを言ってくれる。
毎日あまったるいくらいの日々を送らせて貰っている。
今もメールでもベタベタとしていて、
愛を伝えようとしたが急に頭が冴えて考えてしまった。
もしかして...浮かれすぎなんだろうか。
そう考えると日頃の言動の裏で何か思われていたり...!?
少し頭を悩ませていると携帯が鳴る。
メールを着信したようで、彼女からだ。
「愛してるっ!♡」
...杞憂だったようだ。
口角が上がっているのに気づいたが
このままメールを返すことにした。
語り部シルヴァ
『街へ』
重い荷物を下ろし電車に揺られて
離れていく自分の村を見届ける。
線路の隙間の穴を踏むリズムが心地良さを感じる。
今日私は村を出た。
親どころか村の人ほぼ全員に反対された。
どうせ若手がいないから。人手が欲しいだけ。
そんな魂胆が見え見えのお願いにじゃあ戻る
なんて選択肢はなかった。
もう村は見えなくなってトンネルが全て真っ黒に染めた。
不安な自分の心を表してるみたいだ。
でもきっと...大丈夫だから。
トンネルが開けた。
太陽に反射したビルたちが輝きながら迎えてくれた。
語り部シルヴァ
『優しさ』
「〇〇はやさしーね!」
「〇〇のいいところはやさしいところです。」
無邪気の裏側に感じる悪意が込められた笑い声。
先生も止めようとはするものの一緒に笑っている。
あぁ...またか。
最初こそは嬉しかった。
けれど歳を重ねていくごとにそれが
なんの特徴もない人へのお世辞だと感じるようになった。
周りはかっこいいだの頭がいいだの言われていくうちに
随分と捻くれてしまった。
それからは優しいと言われても素直に喜べないし、
その度自分に劣等感を抱いた。
やれやれ...早く目覚めてくれないかなあ。
そう願うも残念ながらすぐには目覚めそうにも無いようで、
教室内に響くつんざく笑い声はずーっと頭に響いた。
語り部シルヴァ