『明日への光』
あと一分。あと一分で日付が変わる。
だからと言って世界が変わる訳でもなく
ゲームのように暗転したと思えば外が明るくなる訳じゃない。
ただただ日付が変わるだけ。
それでも日付の境界線というものはどこか心に変化を感じる。
明日が仕事だと早く寝なきゃと焦るし
休日だとまだ起きていられる安心感がある。
さて...明日は仕事。
全く来てくれない眠気。
リモコンを無くして
わざわざ壁のスイッチを押さないと消せないルームライト。
そう思っている内に日付は
とっくに変わり10分ほど過ぎていた。
今日という日は
眩しく光るルームライトに当てられて始まった。
...早く寝ないと。
語り部シルヴァ
『星になる』
目を覚ますと身体が軽い。
ずっと凝ってた肩も引きずるように歩いていた足も妙に軽い。
今ならどこでもひとっ飛びできそうだ。
試しに実家へ...!と思ったが
いつもの走る速度と変わらなさそうだ。
...そもそもここはどこだ?
真っ暗で何も見えない。
進むとドアから光が少し漏れていた。
抜けると...火葬場だった。
あぁ、そういう事か。
納得した途端に身体がふわふわと浮き始める。
死人は星になる。
よく言われるセリフだったけど
実際こんな感じになるんだな。
僕は弱い。だから星になっても輝きが弱いかもしれない。
けれど...綺麗な色に輝けると嬉しいな。
お昼時の昼寝をするようにまぶたが
ゆっくりと閉じてきた。
語り部シルヴァ
『遠い鐘の音』
どこかで鐘が鳴り響いている。
反射的に身体を起こし周囲を見渡す。
「ははっ、あんたの故郷は鐘があったのかい?」
「あはは...ええ、毎日のように聞いていたもんで」
恥ずかしさを誤魔化しつつ答える。
故郷を出て街で働くことになったが
どんな運命かここでも鐘の音を聞くとは思ってもなかった。
故郷とは違う音色だがあの重く響く音を聞くと
反射的に体が動いてしまう。
鐘の音を聴いて休憩の指示がでるとこも故郷そっくりだ。
故郷から出たくて街に来たのに、
これじゃあいつまで経っても街に慣れそうにないな。
語り部シルヴァ
『スノー』
静かに降り出す雪を口を開けて待っていた。
口に入った瞬間冷たい刺激が
一瞬脳にまで走ったと思いきや心はポカポカ。
楽しくなって何回も口を開けては飲み込む。
刺激を受けては心躍る。その繰り返し。
辛いこともこれで解決。何度も何度も脳が弾ける。
上着なんて要らなくなるくらいあったまってきた。
もっと、もっと欲しい!
口を開けるだけじゃだめだ。
高い所から思い切りジャンプだ!
これで...いっぱい...!
『えーこちら死体を発見。
原因は薬物の過剰摂取による幻覚や奇行の末
飛び降り自殺だと思われる。どうぞ』
語り部シルヴァ
『夜空を越えて』
普段から手に届かなかった空も今なら届く。
...分厚い鉄さえなければ。
窓越しに見るとビルの群れが光り地上と
空の両方に星が見えるようでまるで別世界にいるみたいだ。
そうしていくうちに雲が地上を覆い隠す。
雲の上は...透き通った宇宙がちらっと見える。
地上からだとぼんやりしていた宇宙が
端っこだけだがこんなにも綺麗に見えるなんて...
空の旅をしてよかった。
普段なら見ることのできない景色だって
見れるんだから...
国を超えて空を超えて、
宇宙の端っこを見ることができて...
いい旅になりそうだ。
語り部シルヴァ