『祈りの果て』
-神はいます。信じる者にこそ神は応じてくれます。-
見習いシスターの頃はよく言い聞かされた言葉。
私はそれを信じてその言葉をみんなに届けては
神を信じ毎日祈りを捧げてきた。
戦争が続く日々が早く終わるように。
少しでも多くの命が救われますように。
現実逃避のひとつだったのかもしれない。
思えば私は成り行きでシスターになった。
やりたいことも将来の夢も
こんなことになっていなければあったかもしれない。
祈りを捧げては自分を押し殺していた日々だった。
それに気づいたのはここが爆撃されたとき。
教会どころか村はほぼ壊滅。生き延びたのも私だけだった。
神はいたんじゃないのか。
信じれば応じてくれるんじゃないのか。
私はこんな地獄を願ってなんていない。
祈りを捧げていた日々を笑うように神は現実を見せてきた。
...バカバカしくなった。
私は久しぶりに声を上げて笑った。
爆撃が終わり静かになった村に私の声が響くほどに。
語り部シルヴァ
『心の迷路』
「あのーすみません。予約していた○○です。」
「本日はお越しいただきありがとうございます。
入る前に事前説明と同意書の記入をお願いしておりますので
待合室にてお待ちください。」
最近話題になっている迷路。
ただの迷路ではなく人によって内容が変わっているらしい。
しかも迷路に入っている間は
何週間何ヶ月と経っている感覚なのに
迷路から出ると入ってから一分と経っていないらしい。
運営側の私達も詳しいことは知らされていない。
事前説明や同意書も迷いに迷って出られなくなっても
自己責任だという確認で、
そこで怖くなってリタイアする人も多い。
ただひとつわかることは、
ここの迷路から無事出られた人は
嘘のように晴れた顔をして出てくる。
だから心の迷路と巷で呼ばれている。
あなたも興味があればぜひお越しください。
きっと晴れやかな気分になることでしょう。
...無事出られたらの話ですが。
語り部シルヴァ
『ティーカップ』
休みの朝。
いつもよりかは遅めに起きて朝一にコーヒーを入れる。
棚からティーカップを出して湯を沸かす。
その間に豆を挽く。
普段ならインスタントの粉で済ますけど休みだからこそ
こういう時間がすごく心が穏やかになる。
サーバーにフィルターをセットしてお湯を注ぐ。
ゆっくりとティーカップにコーヒーが満たされていく。
手間隙かけてやっと完成した一杯。
普段使わないティーカップに
普段しない豆挽きから作るコーヒー。
私の休みはこれから始まる。
語り部シルヴァ
『寂しくて』
画角良し、加工よし、個人情報がバレそうなの入ってない...
全体的に確認を終えて文章をテキトーに添える。
"今日も肌寒いね"っと。これでよし。
投稿して携帯をいじっているといいねの通知音。
コメントも着いてきた。
自分でも何やってんだかと思いつついいねやコメントが
心の器のような何かに一滴ずつ満たされるような気がした。
"危ないから自撮りやめときなー"
そんなのわかってる。
けれどこれをしていないとどうも落ち着かない...
心の器のような何かを満たされるのがこれしかないから...
語り部シルヴァ
『心の境界線』
「お前って人付き合い上手いよな。」
よく言われるが自覚は無い。
というかもう無意識にできるようになったから。
なんて言う方が近いかもしれない。
「わかる。なんて言うか...ここは踏み込まないでってとこは
踏み込まずギリギリ?っていうのか?
ほんと自分がここまでならセーフってとこまで
踏みとどまってくれるよな。」
「「「たしかに。」」」
急に褒められて少し恥ずかしくなる。
みんなの言うことは正しい。
何せ...ほんとに見えるから。心の境界線。
話をしていくとセーフティーゾーンから
アウトゾーンに近づくサインが出てくるから
それを見て回避してるだけ。
それがわかるだけで仲良くできるってのは不思議だ...
語り部シルヴァ