『時を止めて』
すごく嬉しいいことだ。
高鳴る胸がどうにかなりそうだ。
好きな人に告白された。まさかの両思いだ。
あなたに振り向いて貰えるように
身だしなみとか体型維持とかすごく頑張った。
それが報われて好きな人が認知してくれた。
あぁ...告白だけでこんなに嬉しいのに
付き合えたらこれから何があるんだろう...
涙が出そうだ。
今はともかくこの気持ちを落ち着かせたい。
時間...止まってくんないかな...
今顔を見られたくないんだ。
語り部シルヴァ
『キンモクセイ』
いつも神出鬼没で
隣にいたはずなのに目を離せばどこかへ行ってしまう。
いるのはわかるのにどうも見つけられない。
求めれば求めるほど魅了される。
匂いだとか形だとか気がつけば魅了される。
虜になってしまう。
愛を伝える勇気が出ないけど、
いざ伝えようものならその時には既にもう居なくなる。
いなくなると匂いも色付いた風景もパッと消える。
きっと来年もまた来てくれる。
そう信じて来年を楽しみにして待つ。
あの脳裏にまで届く甘い香りを必死に思い出しながら。
語り部シルヴァ
『行かないでと、願ったのに』
心電図が一定の音を鳴らす。
足音や医療器具がガチャガチャとうるさい音が
聞こえるのに心電図の音が一番耳に残る。
看護師が名前を呼んでも返事は無い。
急いで医師を呼ぶ別の看護師。
まるでテレビを見てるかのように私は
ただ目の前の光景を眺めているだけだった。
あの時あなたの名前を呼べなかった。
返事が帰ってこなかったら私はどうにかなりそうだったから。
元気になって退院して一緒に
金木犀を見に行こうと約束したのになあ...
まだそばにいて欲しい。行かないで欲しい。
そんな願いも叶わない。
気分転換に一人で金木犀を見に行っても
約束が守られなかったからか花はみんな地面に散っていた。
散ったはずの金木犀から甘い香りが漂っている。
まるでまだあなたがそばにいるみたいだ。
語り部シルヴァ
『秘密の標本』
出来心だった。
完璧と言われるあのお嬢様の意外な一面を見てみたかった。
身寄りのない私を雇ってくれたお嬢様は何もかも完璧だった。
恐ろしいくらいに短所が無かった。
だからこそ意外な一面があればそれを知りたかった。
そんな思いで掃除といいながらあちこちを漁ってしまった。
ある日、ついに隠し扉のボタンを見つけて押してしまった。
普段は気づかないようなボタンは押すと
壁が人一人分通れるほどの道を隠していた。
静かにこっそりと歩く。
細く暗い道を、闇に飲まれそうな深さの螺旋階段を...
そしてひとつの扉が前にあった。
これを開ければ...恐る恐るドアノブに手を伸ばし
ゆっくりとひねる。
中には美しくも恐ろしく感じる標本が並べられていた。
昆虫に鳥、犬...そして人間も。
これ以上はまずい。
そう思い振り返るとお嬢様が満面の笑みで
両手で持つほどのハンマーを持っていた。
「あなたも綺麗に飾ってあげる。」
そう言って私にハンマーを振りかざした。
語り部シルヴァ
『凍える朝』
カーテンが輝いてる気がして目が覚める。
真っ暗な部屋なはずなのに目を凝らさなくてもよく見える。
異様に寒い。昨日は日中汗をか程度の温かさはあったはず...
足先が冷えてる。
寒い。もう秋の終わりの兆しが見えてきたかもしれない。
冬用の布団を用意しなきゃ...
顔を洗う水も氷のような冷たさでより目が冴える。
早くココアでも飲んで体を温めよう。
今年も冷える時期がやってきた。
それは同時に今年の終わりを知らせるようなもんだ。
少し寂しく感じる...寒いせいだろうな。
語り部シルヴァ