『靴紐』
少しだけおしゃれしてみた。
真っ白な靴の真っ白な靴紐を黒に変えてみた。
黒色がアクセントになってすごく良くなった気がする。
今まで靴紐なんかに目もくれなかったのになあと思いながら玄関を開ける前に持ち物を確認する。
服装は...どう足掻いてもセンスが光ってしまう。...悪い意味で。
それでも人に会う用の服の中じゃ1番マシだ。
よし、行こう。
玄関を開けるために1歩進もうとした。
緩い靴紐が気になって気を引き締めるようにしっかりと靴紐を結んだ。
...よし、行こう。
家から出るだけで心臓が高鳴る。
君に会う頃にはどうなってるんだろうか。
靴紐を強く結びすぎたかもしれないな。
全身ガチガチだ。
語り部シルヴァ
『答えは、まだ』
「付き合ってください。」
可愛がっていた後輩から突然告白を受けた。
正直嬉しかった。けれどこれは家族に向ける愛のようなもので後輩が求めていたものじゃない。
それを知ってて付き合っても君に申し訳ない。
だって君は荷物を持ってくれたりかっこいいとこあるし、
私より大きいのに甘えてくる可愛らしさもある。
私が知ってるんだ。同じクラスや同級生からは君の良さをもっと知ってるだろう。
だから...
「ごめん、1週間だけ待ってくれるかな?」
君のことを考えるか私のためを取るか
まだ答えは伏せさせて欲しい。
それに今は高鳴る心臓を抑えるのに必死だ。
語り部シルヴァ
『センチメンタル・ジャーニー』
家のガス栓閉めたっけなあ...
窓とか玄関の戸締りも今不安になってきた。
新幹線が静かに景色を置いていく中、
ふと家を出た瞬間の記憶を巻き戻していた。
相変わらずこういう所がダメなんだろうなあ。
本来彼女と行くはずだった旅行を行き先と予定を
全て変更して一人で行くことにした。
いわゆる傷心旅行というやつだ。
こういう旅行は初めてで
正直まだ別れてショックを受けている感覚が無い。
この旅を終えた時自分に何かが変わってるのだろうか...
降りる駅まではまだ時間がある。
楽しみすぎて眠れなかった分眠気が今やってきた。
今はこの旅を楽しもう。
心地よい座席と睡眠不足の体は
自然と瞼を閉じて眠りについた。
語り部シルヴァ
『君と見上げる月...🌙』
昼頃まで寝ていた。
もっと寝ていたいがこれ以上寝ると
夜に眠れなくなるということで頑張って起きた。
それに今夜は君と夜に散歩する予定だ。
随分と秋が深まって暑さを感じることが少なくなってきた。
熱帯夜から涼しい夜へと変わって
こうやって二人で散歩することも増えてきた。
風に吹かれてススキがサラサラと音を立てて揺れる。
暑さがマシになってよかったとか
冬でもアイス食べるんだろうなあとか
手を繋ぎながら雑談を交えてのんびり歩く。
ふと君が足を止めて空に向かって指をさす。
見上げると月が優しく輝いていた。
しばらく二人で見上げていた。
涼しくなっても繋いでいる手から伝わってくる熱は
いつまでも熱いままだった。
語り部シルヴァ
『空白』
ふと過去の日記が見たくなった。
我ながら丁寧な字でその都度あったことが書かれている。
ある時は警報で学校が無かったことや
テストの内容が前日に山勘で勉強したところが
出てきたことや幼馴染と遊んだりなど
我ながら事細かに書いてくれてある。
そんなこともあったっけ...
と過去に浸っているとある日を境にページが真っ白になった。
ページをめくってもめくっても何も書かれていない。
次に日記が書かれていたのは2ヶ月後だった。
飽きたのならもっと早めに終わっているはず...
なんだかモヤモヤする...親に聞いてみると親は
鬼の形相で私の両肩を掴み日記を見た事に対して叱責した。
親がここまで怒るのを見たことは数少ない。
だからこそ親がそこまでして
隠したいことがあるのだろう。
日記にヒントが無いかと探してみる。
空白になる前日は幼馴染と川へ遊びに行ったと書いてある。
そんなことしたっけ...私は泳ぐの嫌いなのに...
そういえばいつから泳ぐの嫌いなんだっけ...?
語り部シルヴァ