語り部シルヴァ

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9/7/2025, 10:58:44 AM

『雨と君』

強い雨風で部活が休みになった。
元々幽霊部員だからあまり関係無いけど...

家にはまだ帰りたくない。
きっとあいつが母さんと一緒にいる。
あいつがいる時に帰ると機嫌を悪くして
俺や母さんに当たってくる。
それだけは避けたい。母さんはなんであんなやつのことを...

天気がいいならゲーセンとかに寄って時間を潰せれるけど
今日は台風のような天気だ。よく学校は一日やったもんだ。
時間をどうやって潰そうかと学校内を歩き回っていると
教室で同じクラスメイトが一人で本を読んでいた。

物静かでどこか儚げなクラスメイト。
雨が降っている窓を背景に本を読む君は
なんだか見惚れてしまう。
話しかけようとしたけど
それを邪魔するわけにはいかなかった。

話しかけるならまた明日だ。
(気をつけて帰ってね。また明日。)
声をかけず心で唱えて手を振る。

さて、どこで時間を潰そうかな。
雨の中また廊下を歩き始める。

外の雨音が聞こえるのに自分の足音だけが廊下に響いた。

語り部シルヴァ

9/6/2025, 10:54:02 AM

『誰もいない教室』

外は雨がどんどん激しくなっていく。
それなのにがらんとした教室はすごく静かだ。
大雨警報が出てもおかしくない天気だったが
学校はいつも通りだった。
ただ部活に関しては参加も帰るのも自由にしろと
先生は全部活に連絡を入れたそうだ。

今日は部活をしている人の方が少ないだろう。
私はすぐ帰れる距離だから教室で本を読んでいる。
いつも賑やかな教室だからこそ今日は本が進む。

窓が雨粒を弾く。パタタと音を立てるが静かだ。
きっと先生が見回りに来るまではこの時間は続くだろう。

誰もいない教室、静かで集中できる空間。
今はこの時間を楽しもう。

外は雨が降り続いている。

語り部シルヴァ

9/5/2025, 11:48:19 AM

『信号』

深夜に散歩をしてみた。
この時期はまだ少し湿気があるが
夏に比べると随分と涼しくなった。
月夜の下の道はぼんやりとした明るさで眩しくもない。
気持ちのいい夜だ。
そう思いながら歩いているとピカピカと何かが光る。
よく見ると街灯の下で男女が騒ぎながら
夜景を撮っているようだ。

あまり写真には写りこみたくないなあと思いつつ
別ルートを歩こうとした。
すると女性がカメラのフラッシュを
明らかにこちらに向けて光らせている。それも連写だ。
おいおい...勘弁してくれ...
そう思って早足に去ろうとした。

しかし何かおかしい気がする。
どうせフラッシュを使うなら街灯を避けないだろうか。
写真に詳しい訳じゃないがどうにも引っかかった。
フラッシュも連写にしては不規則で
パターンがあるようにも見える。

3回短く光って1回長く光ってまた3回...
なにかマズイかもしれない。
そう思って警察に電話することにした。

後日警察から男女のトラブルが
もう少しで大事になるところだったと連絡が来た。

語り部シルヴァ

9/4/2025, 10:21:58 AM

『言い出せなかった「」』

言葉が詰まった。
いや、出しても無駄だったというのが正しいだろう。
あれが夢オチだったとしてもそれが本当になってしまうなら?
誰だって喉が潰れるくらいあなたを呼び止めるだろう。

でも私が呼べばあなたは止まってくれる?
笑顔で帰ってからねと口癖のように
軽い言葉で返される。
私はあなたを呼び止める力を持っていない。
だからこそ、あなたがきちんと帰ってくることを信じてるよ。

あなたが出ていったドアに向き、にゃあんと鳴く。
静かだった。当然だ。これはドアだ。
あなたじゃないから返事が帰ってくるわけなかった。

わかってはいるのに鳴き声が止まらない。
早く帰ってきて。

語り部シルヴァ

9/3/2025, 10:54:51 AM

『secret love』

あ、まただ。
机の中には丁寧に折られた紙が一枚入っていた。
私が落ち込んでいる時や悲しい時とかにいつも入っている。
紙を開くと"大丈夫。ひとりじゃない"と一文書かれていた。
何が大丈夫だ、何がひとりじゃないだ。
なんて最初は思っていたが緊張していたのか、
震える字を見て真剣さが伝わってきた。

なんとなくだけど、この人は本心でそう思ってくれている。
真剣に私を元気づけようとしている。
そんな風に取れた。
友達に言えば手紙の人が気持ち悪いと知らない所で
傷つけられるかもしれないから黙っている。

誰が私になぜこんなことしてくれているのかを
正直知りたいとは思う。
でも知ってしまえばこの人は手紙を
送ってくれなくなるかもしれない。

だから私は知りたいと思う気持ちを胸に押し込めて、
手紙にありがとうと念を込めた。

語り部シルヴァ

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