語り部シルヴァ

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『雨と君』

強い雨風で部活が休みになった。
元々幽霊部員だからあまり関係無いけど...

家にはまだ帰りたくない。
きっとあいつが母さんと一緒にいる。
あいつがいる時に帰ると機嫌を悪くして
俺や母さんに当たってくる。
それだけは避けたい。母さんはなんであんなやつのことを...

天気がいいならゲーセンとかに寄って時間を潰せれるけど
今日は台風のような天気だ。よく学校は一日やったもんだ。
時間をどうやって潰そうかと学校内を歩き回っていると
教室で同じクラスメイトが一人で本を読んでいた。

物静かでどこか儚げなクラスメイト。
雨が降っている窓を背景に本を読む君は
なんだか見惚れてしまう。
話しかけようとしたけど
それを邪魔するわけにはいかなかった。

話しかけるならまた明日だ。
(気をつけて帰ってね。また明日。)
声をかけず心で唱えて手を振る。

さて、どこで時間を潰そうかな。
雨の中また廊下を歩き始める。

外の雨音が聞こえるのに自分の足音だけが廊下に響いた。

語り部シルヴァ

9/7/2025, 10:58:44 AM