『言い出せなかった「」』
言葉が詰まった。
いや、出しても無駄だったというのが正しいだろう。
あれが夢オチだったとしてもそれが本当になってしまうなら?
誰だって喉が潰れるくらいあなたを呼び止めるだろう。
でも私が呼べばあなたは止まってくれる?
笑顔で帰ってからねと口癖のように
軽い言葉で返される。
私はあなたを呼び止める力を持っていない。
だからこそ、あなたがきちんと帰ってくることを信じてるよ。
あなたが出ていったドアに向き、にゃあんと鳴く。
静かだった。当然だ。これはドアだ。
あなたじゃないから返事が帰ってくるわけなかった。
わかってはいるのに鳴き声が止まらない。
早く帰ってきて。
語り部シルヴァ
『secret love』
あ、まただ。
机の中には丁寧に折られた紙が一枚入っていた。
私が落ち込んでいる時や悲しい時とかにいつも入っている。
紙を開くと"大丈夫。ひとりじゃない"と一文書かれていた。
何が大丈夫だ、何がひとりじゃないだ。
なんて最初は思っていたが緊張していたのか、
震える字を見て真剣さが伝わってきた。
なんとなくだけど、この人は本心でそう思ってくれている。
真剣に私を元気づけようとしている。
そんな風に取れた。
友達に言えば手紙の人が気持ち悪いと知らない所で
傷つけられるかもしれないから黙っている。
誰が私になぜこんなことしてくれているのかを
正直知りたいとは思う。
でも知ってしまえばこの人は手紙を
送ってくれなくなるかもしれない。
だから私は知りたいと思う気持ちを胸に押し込めて、
手紙にありがとうと念を込めた。
語り部シルヴァ
『ページをめくる』
最近話題の小説を買ってみた。
その文章はとても不思議で読むと
頭に想像するのが容易になる。
人の会話のシーンが、殺人を起こすシーンが、
物語の結末を決めるシーンが、簡単に想像できる。
頭の中で映像を流してるようだ。
ページが気になるところで区切れていた時の
ドキドキが今までにないくらい感じる。
そしてそれと同じくらいに続きが気になって
右から左に並ぶ文字を見て
ページをめくる手が止まらなくなる。
その手が止まったのは日がどっぷり沈んだときだった。
次をめくっても暗くて見えずに
当たりを見回した時にはその暗さに驚いた。
その手は部屋の明かりをつけるとすぐに動き出した。
体が物語の展開を欲していたんだ。
語り部シルヴァ
『夏の忘れ物を探しに』
暑い...もう9月に入ったにも関わらず気温は37度を超えている。
昔からこんなに暑いものだったかな...?
8月の終わりには涼しくなって9月に入る頃には涼しい...
みたいなイメージだったんだけどなあ...
昔の話だからで括られてしまえば
それまでだけどもっと涼しくあってもいいと思う。
早く秋が来て、涼しい風と気温の下のんびり散歩でもしたい。
暑さに負けてコンビニへ避難する。
涼みながら陳列された商品を眺めて
目に入ったアイスを掴み買う。
コンビニを出て屋根の下でアイスを食べる。
夏が忘れた暑さは別の方法で楽しもう。
ただ...やはり毎日は勘弁して欲しいな。
語り部シルヴァ
『8月31日、午後5時』
忘れられない夏休みだった。
思い返せば今年の夏休みはそう感じた。
テストが終わって部活だけのために学校に行って
部活が休みで予定が合えば君に会いに行った。
二人で食べたアイスとか
夏にピッタリなホラー映画を見たりとか
夏祭りにも行った。
沢山の思い出を君と作った。
そして夏が終わるのと一緒に君との物語も終わった。
君のことだ。復縁したいなんて言うことは絶対無いし
僕も言う勇気は持ち合わせてない。
僕たちの...いや僕の思い出は人からすれば
青春という二文字で纏めてしまうようなものかもしれない。
僕にとっちゃ二文字じゃ...言い表せれないけどね。
明日からまた学校が始まる。
君が隣のクラスで良かったと思う日が来てしまうとはね。
夏休み最後の夕陽が沈む。
それでもなお火照りが残る世界も明日には冷めてるといいな。
語り部シルヴァ