『泣かないで』
「僕と...結婚してください!」
君の前で膝をつき結婚指輪を見せる。
最近仕事ばっかりで忙しくも理解してくれて
いつも以上に尽くしてくれた。
休日ぐらいは手伝おうと動くも一緒に家事をしてくれた。
美味しいご飯を作ってくれたり優しくしてくれる君に
何をしてあげれるだろうか。
今後の人生の時間を全部君に捧げて、
できる限りの幸せを送りたい。
君がいいなら結婚して永遠に尽くしたい。
...震えているのがバレてないだろうか、
君はそこまで本気じゃないのかもしれない。
返答が怖い。けれど...それも受け入れないと
今後君を幸せにできる人にはなれない。
セリフを言い切ってひと呼吸おき君の顔を見上げる。
君は口元を手で押え泣いている。
...ダメだったかもしれない。
そう思い立ち上がろうとすると、君は震えた声で答える。
「...私でいいの?」
「君じゃないとダメなんだ。」
そう言いながら立ち上がると君は僕に抱きつく。
子供のようにわんわんと泣く。
あぁ...そんなに泣かないでくれ。
こっちまで泣いてしまいそうだ。
幸せなのに涙が出る...
こんな不思議な経験は今後あるのだろうか。
語り部シルヴァ
『愛情』
こちらに向かってくる足音を聞き取り、
玄関前まで走る。
きっとあの足音はあの人だ。
帰ってくると思うと待ちきれなくなって
玄関を行ったり来たりする。
もしかして聞き違いか...
そう思うと気持ちがしょんぼりする。
一旦部屋に戻ろうかな...
玄関のドアに背を向けた瞬間ドアが開く。
ダッシュで近づく...のを我慢してマットの上で座る。
「ただいま!遅くなってごめんね!」
"全然大丈夫だよ!"
"今日も帰ってきてくれて嬉しいな..."
"いっぱい遊んで!"
"お腹空いた!"
たくさんの感情に体が振り回される気持ちだ。
それくらいあなたが帰ってきてくれて嬉しいよ!
「あっはは。今日も寒いからお部屋行こ。」
頭を撫でてもらえるとしっぽが勝手に動く。
あなたの手は暖かいからずっと撫でて欲しい。
そんな思いをあなたにいつか伝えれたらいいな。
語り部シルヴァ
『微熱』
今日はやたらと寒いらしい。
けれど今日はむしろ日差しが暑いせいか秋風が涼しい。
カイロを体に貼ってしっかりと防寒対策が
できているからだろうか...
昨日はしっかりと布団に毛布を被ったはずなのに朝は
暑かったのか蹴り飛ばしていた。
寝相が悪いと風邪をひきかねないから気をつけないと...
しかし...今日は暖かいなあ...
天気予報のお兄さんは寒いと言ってたはず...
お母さんも上着がかかってるのを見てそんな薄着で大丈夫?
と心配していた。
そんな歳じゃないんだから...
そんなこんなで学校にたどり着き教室のドアを開けて
友達におはようと声かける。
友達は私の顔を見るやいなや心配そうな顔をする。
「ねえ...顔赤いよ?寒くない?」
友達の言葉に体が気がついたのか体からは
寒さと熱っぽさが額から感じ始めた。
語り部シルヴァ
『太陽の下で』
酷く疲れた。
家とは違うけど慣れたベッドとシーツの肌触り、
心電図の音。
家族たちの顔。
今日はおじいちゃんも来てくれた。
涙でぐしゃぐしゃになってるみんなの顔に
思わず笑ってしまうほど。
なんでそんなに泣いてるの?
疲れたけど僕は大丈夫だよ。
ほぼ毎日お見舞いに来てくれて嬉しい。
明日も来てくれるかな?
...でもちょっと眠くなってきたなあ...
ちょっと寝るから明日またお話しようね。
窓からさす太陽のせいか目を瞑ると
ゆっくり白い光に包まれていく気がした。
最後に聞こえたのは家族の泣き声と
心電図が一定の音を出し続けていた音...
語り部シルヴァ
『落ちていく』
「桜の花びら舞い落ちる度に風情と哀愁を感じるんだ。」
かつての春。桜が大好きな友人が桜の雨を浴びながら悲しそうに桜を見あげていたことがあった。
その時はあまり共感出来なかった。
今まで花に興味がさすことも自ら花について調べることもなかった。
ただ今年は彼女ができて2人で紅葉狩りに出かけた。
花について詳しく知らない俺を彼女は花の良さを熱弁してくれた。
あまりの勢いに興味をそそられ花を学ぶことにした。
花びらの形、香り、色合い...彼女には負けるが色んな花を知っていくようになった。
道中にはコスモス、キキョウなどの秋の花が綺麗に咲いていた。
それぞれの香りや色が秋を染めていくようで、
ずっとこんな素敵なものを見逃してたと思うと今まで勿体ないことをしてしまったと感じる。
他の花を見ながら目的地付近を歩いている時に彼女が俺の肩を叩く。
「ねえねえ!上!」
彼女の指を指す方を見あげると、紅葉がヒラヒラと落ちてきた。
一、二枚じゃなく数え切れないほどだ。
彼女が両手を広げくるくると回る。
楽しそうで見てるこっちは笑みがこぼれてしまう。
ヒラヒラと舞い落ちていく紅葉を見つめていると
友人の言葉を思い出した。
舞い落ちていく紅葉は風情を感じる。
けれど...地に着いた紅葉はどこか寂しさを感じてしまう。
なるほど...
友人の言葉を今知った俺は寂しさを埋めるように彼女の元へいき一緒に紅葉の雨を浴びた。
この雨の中彼女といれば、きっと寂しさも洗い流せれるから。
語り部シルヴァ