君からのLINE
LINEの通知がなり急いで携帯を開く。
...クーポンの通知だ。
ため息をついてマナーモードにしたスマホを
ポイッとベッドに投げる。
最近気になる人ができた。
頻度は少ないものの毎日LINEしてくれる。
趣味や価値観がやたらと合うものだから話すのも楽しい。
だけど連絡が来た瞬間に返信するのはキモがられるだろうか。
そう考えてると不安になってマナーモードにして
すぐ手に取れる場所から遠ざけたわけだ。
...数分経ってスマホを手に取りロック画面を開く。
君からの連絡は来てなかった。
ため息をついてスマホのマナーモードを解除した。
やっぱり君からのLINEはすぐに気づきたい。
君との時間を少しでも作りたいなんて言えば
君は笑うだろうか。
そう思いながら真っ暗なスマホの画面を見て
またため息をついた。
語り部シルヴァ
命が燃え尽きるまで
あれからどれくらいが経っただろうか。
戦いが始まり、互いに消耗する一方なのにそれでも自陣のために命を捨てて相手を倒そうと潰れ合う。
鎧はボロボロ、盾も粉々になり槍と腰に備えた刀のみ。
もう受け止めることなんてできない。
ただ迫り来る敵を突き、切りつけ、命を刈り取る。
骨が折れようが手が無くなろうが目を潰されようが、
怯まず敵を倒すことだけに集中しろ。
少しでも死んだ仲間のために、殿のために...
与えられたこの命が燃え尽きるまで滾らせろ。
俺は殿の未来を繋ぐ殿の右腕だ。
前方の敵を見つけ、震える足で大地を蹴り斬りかかった。
語り部シルヴァ
夜明け前
夜明け前がやってきた。
暗かった夜空が少しずつ明るくなるあの瞬間だ。
月は沈み星は薄くなる。
宴のようだった時間は文字通りお開きだ。
夜更けにお酒を飲んでいただけで
時間はあっという間に過ぎた。
明日...いや今日も休みだが、何をしようか。
今から寝ると昼過ぎに起きてしまう。
そうなればやることはひとつ。
少し散歩に出よう。
掃除をしてシャワーを浴びて眠気を飛ばそう。
着替えて玄関に出る。
日中の暑さが嘘のように外は涼しい風が吹いていた。
語り部シルヴァ
本気の恋
「それじゃあ今回はここまで!」
「また見に来てね〜。チャンネル登録も忘れずに〜」
笑顔で手を振りながら〆の挨拶をする。
カメラを止めた瞬間口の表情筋がすっと降りるのを感じた。
私たちはカップル配信者として活動している。
最初は些細なきっかけだった。
大学の気になっていた先輩に恋をしていたのがバレて
それを利用する形で動画配信者の誘いを受けた。
それで試しに動画を撮ってみた結果人気が急上昇。
今でも動画で紹介した化粧品がSNSでバズることがある。
「はい、今日もありがとう。」
そう言いながらコーヒーと砂糖とミルクのセットを
先輩が持ってきてくれた。
「また予定立てて次の企画の準備しとくね。」
「ありがとうございます。またよろしくお願いします。」
砂糖とミルクを混ぜて1口飲む。
自分の撮った動画を見返す。
画面越しの私たちはとても甘く、胸焼けしそうな笑顔だ。
偽りの私たちは本当の恋人のようで、
本気になってるのは私だけという現実がコーヒーのほろ苦さを通して痛感させる。
ミルクと砂糖を混ぜたはずなのに...
語り部シルヴァ
カレンダー
私は日めくりカレンダーが好きだ。
寝る前にその日を終えた証としてカレンダーを破る。
破りきったその時の気分によって破れ方が変わる。
イライラしてたなら荒いし悲しい時は弱々しい...
破れ跡を見ていつもそんなことを思っている。
今日は気になってる先輩と会話が弾んだおかげか綺麗にカレンダーを破れた。
破ったカレンダーは折り紙の容量でゴミ箱にしたり小さく切ってメモ用紙にしたりする。
破ったあとでも使い道は沢山あるんだ。
明日はどんな一日になるんだろうか。
どんな破れ方をするのか楽しみだ。
ワクワクしながらベッドへと向かう。
明日もいい日になるように...
語り部シルヴァ