雨に佇む
今日は花火大会だったはずだ。
花火の空撃ちも鳴っていた。
自分の心臓と同じくらいに肌に響いていたのも覚えている。
それなのにどうだろうか。
一緒に行く相手も花火の予定もなくなってしまった。
お誘いにOKをもらったはずだけど...
直前になってキャンセル。
仕方なく1人で現地に着くと予報ハズレの雨。
もちろん花火大会は中止。
僕が何をしたんだろうか。
いつもより少し調子に乗っただけじゃんか。
あー...カステラも食べたかった。
2人で綺麗だねって言いながら花火を見たかった。
雨の中佇む僕の姿は見てもいられないほど
哀愁漂っているだろうか。
...雨で見えなくなってるといいな。
語り部シルヴァ
私の日記帳
私は日記を書いている。
ただの日記じゃない。
なんと4冊も書いているのだ。
総称を喜怒哀楽日記と呼んでいる。
名前の通りで嬉しいことがあったら喜の日記、
悲しいことがあった時は哀の日記とその時によって
書く場所を変えている。
めんどくさいこともあったけど、
日記の書き方はこれが一番落ち着く気がする。
次に見返した時にひとつの感情でもこんなに違うんだって
知れるのがなんだか面白くてクセになる。
ちなみに今月は哀の日記が1番多く書いたようだ。
夏は嫌いだからね。
語り部シルヴァ
向かい合わせ
彼女はいつも向かい合わせに座っている。
なんでも隣は恥ずかしいそうだ。
勉強する時も、カフェでおしゃべりするときも、いつも向かい合わせに座る。
2年ほど付き合った今、そろそろ隣でも大丈夫だろ?と聞いてみた。
彼女は「君の顔が自然と見れるからいいの。」と変わらず恥ずかしそうに答える。
そんな君の笑顔がどうしようもないほど好きだった。
僕も、向かい合わせが好きになった。
幸せの絶頂とも言えた頃、些細な喧嘩をした。
普段喧嘩をしないもんだからお互いのヒビの修復は困難を極めた。
ある日、彼女がついに答えを出す。
「ねえ、別れよう。」
向かい合わせに座る彼女は今までで1番真剣な顔だった。
語り部シルヴァ
やるせない気持ち
たった今勇者を倒した。
勇者は4人組だった。
僧侶、盾役、剣士、そして勇者の4人組...
なかなか手強い相手だった。
連携があって、しぶとく倒すのも我ながらやっとだった。
不思議なことに奴らは笑っていた。
どんどん押されていっていたはずなのに奴らは
笑い合い助け合いながら必死に我にしがみついてきた。
結局は倒した。
玉座に戻り一息つく。
倒してスッキリしたはず...なのになにかモヤモヤする。
我は今まで1人で勇者を倒してきた。
だいたいは一騎打ちだったから
今回のようなパーティで挑んでくる奴らは始めてだった。
静かな玉座の空間の中、
倒した勇者たちの残骸を眺めながら敗北感に浸っていた。
我は...きっと羨ましかったのだろう。
語り部シルヴァ
裏返し
私は不思議な魔法にかかっている。
みんなの前だと素直になれるのに幼馴染の前だと思っていることと逆の言葉が出てしまう。
一緒に学校行こうとすると嫌味が出て
ありがとうじゃなくて別にが出る。
...好きなのに嫌いと言ってしまう。
自分でもなんでこうなっているのか、どうすればいいかわからない。
友達に相談してもニヤニヤしてばかり...
限界が来て幼馴染に相談してみた。
...顔を真っ赤にしてごにょごにょと呟くばかりだった。
「ハッキリ言ってよ!」
そう伝えると幼馴染は深呼吸して私にこう言った。
「もしかして...あ、いや気のせいだったら
恥ずかしいんだけど...僕のこと好き...なの?」
今まで無かったこの気持ちの答えが今わかった。
私はすぐさまそれを幼馴染に伝えた。
魔法はもう解けていたようだ。
語り部シルヴァ