にちようび
床屋の前で
待ち合わせ
赤白青が
やたらに回り
三半規管を
狂わせた
どら猫どもが
にゃーと鳴き
見上げた空には
十六の
とんびが
ぴーひゃら
旋回してるし
選挙でもないのに
あの人この人
たすきをかけて
かすんだ往来
行ったり来たり
側溝の
ひゃくまん匹の
ボウフラが
今日じゃ明日じゃ
さなぎになって
二の腕かきつつ
黄砂にやられた
めだまをきょろきょろ
巡らせて
俺を見つけた彼女の顔が
春らんまんの
それだった
あれは別府の頃だった
亀井の家の
でけー犬
噛みつきゃがった
幼い俺の手
あいつのばあちゃん
たまげてさ
泣かん泣かんと
味噌ぬりつけた
下関では
馬場君と
自転車駆って
隣町まで
やたらに
カマキリ採った夏
橋田んとこの
防風林
そっと覗けば
知らねー婆婆が
立ち小便を
してたっけ
小四までは呉に住み
どうしてアイツと遊んでいたのか
名前もはっきり覚えてねーや
イヤに懐いてくるチビだったな
一度招かれ
行ったアパート
やけに西日が強くてさ
万年床が
艶めかしくて
走って出てった
あれっきり
幾つもの
記憶の里が
あるけれど
俺はきっと
帰らない
もう二度と
博打で借金
こしらえねえ
酒で仕事も
休まねえ
知らん女も抱かねえし
知らない猫すら
撫でねえよ
たまには実家に
電話もするし
盆暮れ
墓にも参るかな
飯炊きからきし
だめだけど
回覧板なら
回せるさ
明日床屋で髪切って
髭をあたって
帰って来たら
きっとあんたの柔らかい
胸に抱かれて
心をきめる
赤ちゃん
俺が
父親ぞ
曇りガラスに
もへじと描けば
まなこがあらへん
おかんができた
それではあんた
あかんがな
これが足らへん
わてに任しや
ホクロを足した
いやな叔母
そらおおきにと
いなしておいて
ひとりで泣いた
洗面所
そんなところで
なんやのあんた
歯あ洗わせてや
かなんがな
それぁおばちゃん
すまんこっちゃで
わたいはもう
寝てこますかな
わてがせっかく
買うてきた
甘いみかんを
おおきに言うて
いつちょまえに
食わんかれ
まったくあんたは
めっぽうアレ似で
これこれあれこれ
気が利かん
腐ったみかん
おもくそつぶして
おばんの口に
ねじこんで
酸っぱい酸っぱい
嘆くの尻目に
おならをこいで
去んだった
おもてに出たら
花曇り
バイバイベイベー
またいつか
そうは言うても
金輪際
そうは言うても
また火が付いて
場末の男女が
繰り返し
どうでもええのに
目が離せんで
気がついたらば
月曜日
ああかなわんと
顔を洗ろうて
仕切り直してみたけれど
相撲の相手は
人気の小兵で
これが苦手で
手が付けん
行司にどやされ
客に急かされ
しぶしぶ立ってはみたものの
やっぱりおののき
尻ついて
負けた負けたと
わめいたに
花に嵐のたとえはあるに
ばいなら
ならばい
わたいの人生