→その町の名は、倫敦。
霧、あるいは街灯の町
狭間で暗躍するは、MI 6
跋扈するジャック・ザ・リッパー
人間どもの鬼ごっこ
ケット・シーがニヤニヤと嘲笑う
それもすべて
オベロンと夜の女王の庇護あってのこと
テーマ; 光と霧の狭間で
→音は有って、音は無い。
あまりに静寂が長居してしまったので、いつもは聴こえないような砂時計の砂粒秒を刻む音が、聴こえた気がしましたが、たぶん気のせいでしょう。
そもそも砂粒秒など、あるものではないのですから。
テーマ; 砂時計の音
→短編・プレアデス星団
プレアデス星団が何処かへ行ってしまいました。
星の集団で消えて、専門家は大騒ぎ。
喧々囂々、専門用語を飛ばして色々な仮説が立てられます。難しい計算が、コンピューターや紙の上を走ります。
しかしその原因を特定することはできませんでした。
メイちゃんは、さっきからずっと絵の具の筆洗いバケツを覗き込んでは、しきりに感心しています。
「うわ〜、綺麗だなぁ〜」 
先程まで宇宙の絵を描いていたので、筆洗いバケツの水は、夜空を流したような深い青色に染まっています。
そして、よく見ると小さな星々が水の中をたゆたっています。
専門家が探しているプレアデス星団の星たちです!
実は、たまたま筆洗いバケツが空に反射してしまい、星団たちはそこを宇宙だと勘違いして飛び込んでしまってのです。
「宝物にしようかなぁ〜」
メイちゃんはそんなことを言っていますが、大丈夫。彼女はちゃんと知っています。
星の住処が宇宙にあることを。
だから、ね?
専門家さんたち、もう少しお待ち下さいな。
テーマ; 消えた星団
→短編・爺や、かく語りき。
やや、姫様! 何をなさっておいでです? 恋慕の情を数式で明らかにする、ですと?
なんと愚かなことを!
愛や恋は、非常に尊い情緒でこざいますぞ。それを数字に置き換えるなど、以ての外でございます。
爺は、姫様をそのような不人情な輩に育てた覚えはございませんぞ。
あれ? どうなさいました? 表情が曇ってございますよ? 
え? 何かしておらねば、隣国の王子から手紙が来ぬ日を耐えられない……。
あれあれ、まぁまぁ!
フィアンセ様の便り無きをお嘆き故の、お暇潰しでございましたか。
致し方のない姫様でらっしゃる。
グツグツ思い詰めるのならば、隣国まで王子をお訪ねなさい。
「来い」と念じるよりも、「会い」にゆけばよろしい。
行ってもいいのかって、もちろんでしょう。姫様は、童話の主人公のような囚われの姫ではないのですからね。自分で運命を切り開きなさい。
あぁ、泣いたカラスがなんとやら。
そうそう、姫様には笑顔がお似合いですよ。
愛や恋の行方は、ハッピーな未来がお似合いございますからね。
テーマ; 愛(会い)―恋(来い)=?
→梨とギャンブル
ここ数日のあいだ、高熱にうかされていて、身体の寒気とは裏腹に、喉は熱で渇ききっていた。
猛烈に梨が食べたくなった。
果汁を保つために果肉があるかのような、「当たり」の梨。林檎よりもさっぱりとして瑞々しい果汁は、まさに甘露ってヤツだ。
呼気の熱さを苦々しく感じながら、布団の中で何度も梨を想った。
ところで、話はガラリと変わるのだが、数日前に熱に浮かされて奇妙な夢を見るだろうな、と書いた。
うん、見た。
なぜか私はギャンブルの卓に座っていて、トランプのカードが配られていた。
対戦相手の女性に見つめられ、観客の視線を浴び、ディーラーに目線でゲームの進行を促されたが、どんな種類のゲームなのか皆目見当もつかない。ポーカーなのか、ブラックジャックなのか……。しかしそのどちらにせよ、それ以外のゲームにせよ、ギャンブルに詳しくない私には、その場で何をしたら良いのか全く分からなかった。
だから「どうしていいのかわかりません」と素直に白旗を揚げたら、そこにいる全員にもれなく嗤われた。そして目が覚めた。
とても不条理だと思った。まぁ、ギャンブル自体、そんなもんか。
果たして小説のネタにはならないが、ここでのネタにはなったので、良しとしよう。
テーマ; 梨