→短編・今日もポンポン船
人生は大海原を渡る航海で、僕たちは産まれたときから船を操る航海人だ。自分の船のメンテナンスも自分次第。
昔、付き合っていた人の言葉を、私は折に触れて思い出す。
スマートフォンのニュースに流れてくる芸能人の不祥事、もしくはスポーツ選手の活躍、彼らの船は浅瀬に乗り上げ座礁したり、パワーブーストを装着してフルスピードで海を滑って征く。
私は大成することもなければ、それほど大きな挫折もない成長の少ない人生だ。きっと私の船はおもちゃのポンポン船みたいなもんなんだろうな。
まぁ、いいさ、豪華客船は維持が大変だし、帆船は風を操らないきゃなんないし、手漕ぎは絶対にムリ! そんなに遠くまで行かなくても、人生の海は常に下にあって、私をゆらゆら揺らして、沖へ沖へと運んでいくしね。
ちなみに元カレは、ホンモノの船乗りになって、今日もどこかの海洋を航海中だ。
テーマ; 未来への船
→乾燥と湿潤
キィンと耳が鳴るような
静けさに耐えかねて
砂漠の夜から逃げ出した
シトシトと
湿度の薄葉が降り落ちる
奥深い森に逃げ込んだ
ただそれだけの話
テーマ; 静かなる森へ
→夢を語る。
―と、以上が私の夢です。ネタバレ防止みたいに反転文字にしてあるので、どうぞ上記部分を選択して色を変えてご確認くださいね。
心の美しい人のみ見えるようになってます………――
――あ、あれ?? 反転させても、私が見えないぞ?? おかしいな。どうして? 私の心は明鏡止水のごとく清らかなのに……。
テーマ; 夢を書け
→短編・届かない……
ど、どうした?
そんなに塞ぎ込んで。君の呟き、聴こえたよ。
よかったら話を聞こうか?
何に届かないの?
想い人に君の心を打ち明けた?
それとも、夢にあと一歩実力が及ばない?
あ、送った手紙の返信待ち、とか?
待ち時間って、辛いよね。
投げたボールの返球は必ずあると、そう信じてるんだね。もしくは返信など期待しないのだと、自分との折り合いをつけようとしてるのかな?
焦燥感や期待や不安に囚われてるんだね。
でもね、
君はボールを投げた。何かにそれを委ねた。
届くか届かないかは、もう君から離れた問題だ。
縁があるなら、何かになって君に戻ってくるよ。
そうそう、全然関係ないけどさ、相互作用を意味するとき、インタラクティブって表現することが増えたよね。どうにも慣れなくて、何度も辞書を引いたよ。
ようやく僕の脳に届いたみたい。時間が必要だったんだね。
どう? こんな与太話だけれど、少しは楽になった?
僕の話、君の心に届いたかな?
テーマ; 届かない……
→レースを編む
編み上げたばかりのレースのテーブルクロスに水を通す。久しぶりにかなりの大作だ。
ところで、水を吸ったレースはとても重い。よっこらしょと、軽く脱水。
プロの人が見たら、あまりの雑な扱いに開いた口がふさがらない知れないが、気にしない。日常使用の素人作品なのだから。
そこそこ水の切れたテーブルクロスをベランダに干す。
天気の良い日。ベランダのガーデンチェアに腰掛ける。
風に揺れるレースが、木漏れ日のような繊細な影を私に降り注いでくれた。
テーマ; 木漏れ日